映画版「イントゥ・ザ・ウッズ」



 始まって10分くらいしたあたりで、就学前の子とその親らしい2人が出ていって、そのまま戻ってきませんでした。シンデレラや赤ずきんが出てくるディズニー映画を観にきたのに、期待していたのとは違っていたのでしょう。中にはそれでも気に入る子もいるかもしれないですが、そう思わなくてもしかたがありません。

 公式サイトのトップページに、"シンデレラ、ラプンツェル、赤ずきん…ディズニーが“おとぎ話の主人公たち”のその後を描く"とあるように、ハッピーエンドが本当に幸せな結末で、"いつまでも幸せに暮らしました、めでたしめでたし"でいいのかと問いかける。
 ディズニーのテレビドラマ「ワンス・アポン・ア・タイム」では"魔法は人を不幸にする"と繰り返されています。ディズニーが「イントゥ・ザ・ウッズ」を映画化したのは、その主張と同じ流れの中にあるようです。ディズニーが過去のアニメ映画の実写版を改めて作るのは、17世紀にペロー童話、19世紀にグリム童話が集成されたように、21世紀のディズニー童話として後世に残したいのではないかと考えています。
※ところで、「まれ」の"地道にコツコツ"とも似ています。最後にあの言葉で終わる点で、夢も希望も否定する「まれ」とは違いますが、魔法ででっかく実現はいけない。
 もともと「イントゥ・ザ・ウッズ」は1987年初演のブロードウェイ・ミュージカルで、88年にトニー賞で3部門を受賞、2002年のリバイバル上演はミュージカル・リバイバル作品賞を含め2部門を受賞しています。これは珍しいことですが、初演もリバイバルも演出をジェームズ・ラパインが手がけています。彼は脚本も書いていて、さらに今回の映画の脚色もしています。1987年にオリジナル版を作り上げた人が、2002年の視点と技術で作品を見直し、2014年には映画としての構成に作り変えたということになります。



 舞台から映画に作り変えるときに、いちばんわかりやすいポイントは休憩をどうするかです。単に切れ目を入れて休み時間を作るのではなく、物語の構成を作り直す必要が出てきます。「サウンド・オブ・ミュージック」や「ウェストサイド物語」は映画でも休憩が入りますが、舞台とは切れ目が違います。
 舞台の「イントゥ・ザ・ウッズ」は映画では扱いが小さめのラプンツェルがシンデレラと対等に近く(初演だと白雪姫や眠りの森の美女も出てくる)、一幕終わりの"ハッピーエンド"がわかりやすかったのですが、映画は休憩なしで進んでしまう分、ちょっとぼやけてしまう。
 それと、現代のスーツにネクタイ姿のナレーターがいて、おとぎ話の外側から、いろいろ言っていました。彼がハッピーエンド後の二幕途中で、おとぎ話の中へ悲劇的に引き込まれてしまうところに、何かこの作品のテーマが込められていそうですが、残念ながら映画版には出てきません。

 物語は舞台の方がおもしろかったですが、音楽とキャストは豪華でした。
 最初の"Into the Woods"の物語の始まり、森へ入っていく、何かが待っている…このわくわくする感じは見事です。オーケストレーションのジョナサン・チュニックはミュージカル「タイタニック」のあのコーラスを仕上げた人。音楽監督と指揮はトニー賞の名誉賞(音楽監督と指揮を表彰する部門がない)受賞者のポール・ジェミニヤーニ。ブロードウェイの「キス・ミー・ケイト」をこの人と別の人の指揮で観たことがあるのですが、あんなに変わるものかと驚きました。彼が指揮したニューヨーク・シティ・バレエ来日公演の「ウェスト・サイド・ストーリー組曲」は、これまでに観た「ウェスト・サイド・ストーリー」のマイ・ベストです。
 キャストは出番の多い赤ずきんのリラ・クロフォード(2012年のアニー)、シンデレラのアナ・ケンドリック(1998年「上流社会」でトニー賞候補)、パン屋のジェームズ・コーデン(2012年「ワン・マン・トゥー・ガヴナーズ」でトニー賞演劇主演男優賞)が存在感と歌に見ごたえ聴きごたえがありました。他にもブロードウェイやウェストエンドの舞台で活躍している人がいっぱいで、シンデレラの継母クリスティン・バランスキーはトニー賞授賞式の常連、姉のひとりタミー・ブランチャードはバーナデット・ピータース版「ジプシー」のルイーズ、巨人のフランシス・デ・ラ・トゥーアは「ヒストリー・ボーイズ」の先生(この時の生徒のひとりにジェームズ・コーデンがいた)、ジャックの母親は歌手でコメディエンヌのトレーシー・ウルマン(テレビ版「ワンス・アポン・ア・マットレス」のウィニフレッド)、ジャックは映画版「レ・ミゼラブル」のガヴローシュでした。
 メリル・ストリープのために作られた新しい曲は最終的にはカットされてしまいましたが、解説つきで観ることができます。


 ブロードウェイ初演版はテレビ放送されて、DVDにもなっているので、近いうちに見比べてみます。



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