「江戸糸あやつり人形 結城座 第一回スタジオ古典公演」@小金井結城座スタジオ

 遅い時間には雨という予報でしたが、出かける時の空は晴れていたので自転車。念のために雨合羽の上下は携行しました。豪快な蝉時雨を耳にしながら、三鷹市に入ったあたりで、空模様は変わらぬままにポツポツが始まりました。ポツポツの時間は短く、ほどなくサーっとなり、これでは仕方がないとポンチョを被って走り出すと、今度はザーっ。珍しく下もつけなければなりませんでした。かなりひどい降りの中を5分ばかり走るうちに、スーっと引いていくように雨はおさまりました。ずっと道露は濡れていたので、それなりに広い範囲で降ったようです。蒸してしかたがないので、雨合羽を脱いで走り続け、開演時間ぎりぎりに着きました。

 今回は稽古場スタジオで、主に地元の人たちを集めてという特殊な公演なので、すぐに人形芝居を上演するのではなく、人形について、結城座の歴史についての解説がありました。また、海外演劇を含めた新作を上演したり、海外公演の実績も多いのですが、この日は基本の古典を中心にした演目が並べられていました。
 結城座は江戸時代から四百年近く続いている、糸あやつり人形による芝居の一座です。人形芝居といってもいろいろありますが、ここで使われる人形の特徴は上から垂らした細い糸で操られることです。ヨーロッパのマリオネットで使われるストリングスと比べると柔らかです。これはマリオネットでも同じですが、人形にどんな動きをさせるかで糸(ストリング)の数は変わります。前にウィーンのマリオネット劇場で聞いたところでは通常7~8本、20本あればバレエを踊らせることができるということでした。結城座の人形も複雑な動き、特殊な動きに対応するために糸の本数が増えていくそうです。糸は手板と呼ばれるいわば操作盤とつながれて、それを手に持ち操ります。基本動作のうち、歩く、立つなどに必要な操作はそう変わらないかもしれませんが、「座る」になると椅子に座るのと、正坐するのとでは当然違うはずです。首の動きでは、西洋のものは傾げるのですが、結城座の人形は落語家のように左右に振るのだそうです。
 
 前半は本舞台という、人形が芝居をする舞台の上に、人形遣いが立つ足場があるという形式。本来なら人形遣いが見えないようにする設えにするところを、今回はあえて見えるようにしています。
 「三番叟」。神への奉納の舞から始まりました。本来は幕を開ける前に、幕内で行うものだったということですが、神様だけでなく人にも見せるように変わったのでしょう。謡い舞い踊りながら登場し、正坐して一礼。再び、謡い舞い踊ります。遣い手の足元は見えませんが、人形が足をつくのに合わせて、トンと踏んでいるようです。ここでは、謡いも遣い手自身が詠じています。
 「千人塚」。江戸時代の小噺を舞台化したものだそうです。千人塚には幽霊が出ると評判なのに、暗くなってからここを通らなければならなくなった坊さん。坊さんは、出て来た幽霊と相撲で勝負することになります。「三番叟」の人形は頭が小さく、手板にも年期が入っていたように見えましたが、こちらのは戯画化されたような頭の大きさで、デザインも新しいように見えました。通常はひとつの人形はひとりの人が遣うのですが、最後にある仕掛けのために、ちょっとだけふたり遣いをするところがありました。客席の小さな子どもが大喜びでした。

 10分くらいの休憩があって、その間に平舞台という遣い手と人形が同じところに立つ設えに替えられました。奥は松羽目になっています。この日はありませんでしたが、他に2メートルくらいの高さのところから長い糸を遣って操る舞台のつくりもあるのだそうです。
 「寿獅子」。いわゆる獅子舞を人形が演じます。説明の中にあったのですが、東アジアにいたのは虎でライオンはいません。考えてみると"獅子"とは何なのかという疑問がわいてきます。イギリス王室の紋章のライオンも果たして現実のライオンを知って描かれたものなのかどうか。百獣の王を象徴的に表現したものということでしょうか。最初のうちは、お正月の獅子舞のように、ふたりの男が中に入って踊っているように見えます。後ろの男が抜けて出てみたりもします。ところが、胡蝶が現れると、前と後ろで喧嘩していた獅子舞が一頭の獅子に変化したように、動きが変わります。やがて、胡蝶が姿を消すと、獅子は二人の男による獅子舞に戻ります。今度は前側の男が顔を見せるのですが、前が二枚目、後ろが三枚目なのにはどんな意味があるのでしょうか。
 「釣女」。狂言や歌舞伎で観たことがある話です。独身の大名が嫁探しのために恵比寿様にお参りすると、境内に落ちている釣りざおで嫁を釣るようにというお告げ。大名には美しい姫君が釣れますが、太郎冠者が釣ったのはとんでもない醜女。狂言では太郎冠者は橋掛かりを逃げていきますが、歌舞伎やここでは主人の大名からも諭され、逃げ場がないようです。前までは、遣い手自身の声による芝居や謡でしたが、ここでは録音された名人の声に合わせての上演でした。

 瞼や顎が動く人形も見たことがありますが、この日に登場した人形そのものに表情は動きませんでした。それは無表情というわけではなく、角度がほんの少し変わることで、むしろ雄弁に気持を訴えているようにも見えました。遣い手自身はあまり表情を出しませんが、時として人形が演じている人物の感情がほの見えることがありました。ブロードウェイで「アベニューQ」を観た時に、物語が進むうちに人形と遣い手が一体化したように見えたのを思い出しました。今回演じられた作品はどれも短い話で、リアルな感情を表すところはあまりなかったのですが、現代劇など長い物語になると、そのあたりの見え方も変わってくるかもしれません。

 外へ出ると、道路は乾いていましたが、また小雨が降り始めたところでした。ポンチョをかぶって5分ばかり走るうちに止みましたが、どうもつきあいにくい天気です。


















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