宝塚歌劇宙組公演「美しき生涯/ルナロッサ」@東京宝塚劇場

 宝塚の公演はしばらくぶりです。正月以来くらいでしょうか。つまり、震災前です。休憩時間に売店カウンター周辺以外のロビーが暗かったことに、ちょっと驚きました。そんなに暑い日ではなかったので、エアコンのことは気づきませんでしたが、いろいろなところで節電がなされているようです。

 「美しき生涯」は大石静の脚本。宝塚歌劇は原則、内部の演出家が脚本も担当するので、こういうことは珍しいと言っていいでしょう。外部の人の脚本による公演というと、菊田一夫や北条秀司の例を聞いたことがある(再演された演目を観たことはある)くらいです。まあ、海外ミュージカルもそういう分類をすることができるかもしれません。演出家が外部というのも、海外ミュージカルを含めて何度か観たことはあります。今回の場合は脚本は外部、演出は内部の人の組み合わせです。
 実際どういう進め方をしたのかは知りませんが、今回は新作なので、現在の出演者を想定して書くことが可能です。旧作の再演や海外ものとは、そこが違うところです。そうして選ばれた主人公は石田三成(大空祐飛)と茶々(野々すみ花)で、このふたりの間に愛情があったという設定の物語です。最初の出会いでは、茶々はまだ子どもで、わがままを言っているところを三成が諭します。三成は道徳的に正しい判断をする人物で、それを丁寧な言葉で伝える知性があります。そこに茶々は惹かれ、三成も同じ気持を抱きます。
 賤ヶ岳の戦いの後、三成は主君・秀吉の命で北ノ庄城から茶々を助け出します。このことで、茶々の心は決定的になるのですが、三成は身分の違いを理由に彼女と距離を置こうとします。ぐずぐずしている間に、かねてから茶々に目をつけている秀吉が三成に、彼女を説得するよう命じます。家臣としての道徳に縛られている三成は、その命に逆らうことができません。
 この葛藤への解決にはならないのですが、秀吉のもとへ行く前に、茶々と三成は情をかわします。そして、何百人という側室がいながら、ひとりの子どもにも恵まれなかったにも関わらず"秀吉"の子が生まれます。
 三成と茶々との主筋と並行して、茶々を守ろうとする忍び疾風(鳳稀かなめ)と、北政所の命で茶々を監視する忍びの姉妹(純矢ちとせ、すみれ乃麗)が暗躍します。疾風はなかなか動かない三成をけしかけるのが基本ですが、姉妹は茶々の生んだ子を暗殺したりもします。
 やがて、秀吉が亡くなると、三成の立場は微妙なものになります。従来の歴史小説と理由は違いますが、三成は秀吉の家臣たちに人望がありません。彼の正しさが疎まれているのです。
 そして、関ヶ原の合戦。ここで、彼は自分の信条を曲げる行動に出ます。旗印として、秀頼に参戦してほしいと茶々に頼み込んだのです。戦に勝つには、どうしても必要なことでしたが、主従の立場からすると筋違いで、道徳的には正しくない、三成の美学に反する願いであり、頼み方です。茶々は、三成ならこう言うであろうという論理で断ります。三成は自分の美学に殉じることを選び、負け戦へと赴きます。
 論理としては妥当な判断でしたが、情としては納得できず、茶々は後悔し、悩み苦しみ続けます。疾風は茶々を三成が押し込められている牢へと案内します。ここで、三成は初めて美学の建前を捨て、茶々への心を吐露。豊臣の家臣としての美学には反しても、ひとりの男としての彼の生涯の"美しき"部分を吐露したということでしょうか。
 「ベルサイユのばら」なら脱出の話も出るところですが、ふたりは来世での再会を約し、三成は従容として刑場へ向かいます。あとは主な人物たちのその後や末路が描かれます。
 従来の"茶坊主"イメージとは違う、新しい石田三成像です。封建主従の道徳を守ることが正しいと信じているようですが、茶々との間にこっそり子を成すところなど大いなる矛盾をはらんだ男でもあるようです。公私の公、公私の私を完全に分けていたということでしょうか。そして、初めて公に私を持ち込もうとした時に、すべてが裏目に出てしまったようです。結果としては、自分の美学を貫いて敗れた形になります。秀頼を担いで勝っていたとしたら、"美しい生涯"とは言えなかったということもできそうです。

 「ルナロッサ」は、赤い月というタイトルから想像できるように、中近東をイメージしたショーです。宝塚のショーのひとつの典型はこんな感じでしょうか。①冒頭は2番手スターをメインにして、ほぼ全員が登場して全体のテーマを提示する②その途中でトップスターが登場③テーマに沿ったイメージを次々に披露する。2回くらいトップスターが銀橋を歩く。未来のトップスターも1回歩く。④(以前は明確な中詰めがあったけれども、最近はあったりなかったり)⑤ロケット⑥大階段が出てきて、男役だけの群舞やトップコンビのデュエットなど⑦パレード。
 今回は、アラビアン・ナイト風であったり、現代のバザールであったり、中近東のイメージがあちらへこちらへと飛躍していきました。白い猫が異質で目を引いたのですが、あれは何だったのでしょうか。パレードのエトワールも聴きごたえがあり、楽しいショーでした。

 

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