「アンデルセン」@四季劇場[秋]

 2週間くらい車輪の交換のため預けてあった自転車の修理が終わったという連絡があったので、30分くらい歩いて取りに行きました。天気予報では夕方雨ということでしたが、降雨量は大したことなさそうだし、空は晴れていたので、合羽は持たずに出かけました。
 預けていた2週間、折り畳み自転車に乗っていて、そのクセがついていたのか、最初ちょっとぎこちなかったのですが、動き出してみると、どちらが走りやすいかは明らかです。しかし、途中で何度か寄り道した際に、カギをかけようとして折り畳み自転車に使っているカギを出そうとしてしまいました。これはどちらでも同じようなものだからでしょう。劇場に近づく頃には、晴れていた空に、黒っぽい雲が増えていました。

 「アンデルセン」は、ダニー・ケイが主演した1952年の映画「アンデルセン物語」が元になってなっています。舞台版は1974年にロンドンでトミー・スティール主演で作られたのが最初で、四季版プログラムにはトミー・スティールの名前が台本のクレジットとして載っています。映画は観たことがありますが、ロンドンの舞台はCDのライナーで知るのみです。ざっと読んでみたところでは、小さな町の靴職人ハンスが、デンマークの国民的童話作家となるまでの物語という根幹は同じですが、途中がだいぶ違うようです。映画では重要な役割を果たすマダム・ドーロというバレリーナの代わりに、ジェニー・リンドという歌手が相手役になっています。四季版は、トミー・スティールの名前を載せてはいますが、映画版の物語に近いようです。
 音楽はフランク・レッサー。作詞も作曲もする人で、代表作は「ガイズ・アンド・ドールズ」や「ハウ・トゥ・サクシード」でしょう。「アンデルセン」の曲でいうと"Wonderful Copenhagen"や"Thumbelina"を、ときどき劇場や手持ちのCD以外でも耳にするように思います。

 1974年よりも1952年風の時代を感じる序曲が終わると、子どもたち(に扮した大人ですが)が出てきて、彼らの差し上げるような動きに合わせて幕が上がります。靴職人ハンス(味方隆司)のお話を待ちかねている子どもたちなのでしょう。デンマークの小さな町オーデンセ。この町の学校の前で、授業が始まる前に、子どもたちはハンスにお話をせがみます。この子どもたちは「親指姫」の話を初めて聞いている。新しいお話しに夢中で、学校のことなどすっかり忘れてしまっています。大人たちの中にも、ハンスのお話が好きな人もいますが、教室でいつまで経っても来ない子どもたちを待っている先生はその仲間には入りません。先生は町長に、自分が出ていくかハンスが出ていくか2つに1つだと迫ります。
 ハンスは荷物をまとめて、弟子のペーター(高橋徹)を連れ、コペンハーゲンに向かいます。オーデンセとコペンハーゲンは別の島にあるので、荷車よりも船が欠かせませんが、船に乗る場面の代わりに象徴的な表現なのでしょうか、船長姿の男が荷車を押すのを手伝ってくれます。
 コペンハーゲンの街で、彼はマダム・ドーロ(斉藤美絵子)という美しい女性を見かけます。ハンスはひと目で彼女に恋しますが、彼女にはニールス(松島勇気)という夫がいます。マダム・ドーロは高名なバレリーナで、ニールスはダンス・パートナーで振付家でもあります。新作のための振付に、今までの靴ではダメだとマダムは新しい靴を求めています。ペーターの機転で、ハンスはマダムを訪ね、靴を作ることになります。
 この時、ハンスはマダムとニールスの言い争いを目撃します。それは、芸術上の問題を話しているのですが、言い方の激しさや、夫婦の甘えからか手が出てしまったのを見て、ハンスはマダムが惨めな思いで従属しているのだと思いこみます。ペーターをはじめ他の人たちには一目瞭然なのですが、恋に夢中のハンスにはわかりません。
 童話に夢中でも靴職人としての腕は確かだったようで、ハンスの作った靴はマダムに喜ばれます。ますます気持をつのらせた彼は、彼女に捧げる物語「人魚姫」を書きあげますが、それを渡そうとした時、真実に気づきます。ここまでが第一幕。1時間弱でちょっと短めです。

 休憩時間に外へ出てみたら、道路が濡れていました。第一幕の間に、雨が降り出し、そして止んだようです。

2幕に入っても、ハンスの思い込みはまだ完全には抜けていないようです。マダム・ドーロのための靴を週に一足ずつ作り続けるのは微笑ましいですが、彼女のをニールスから救い出したいと考えるのは、一歩間違えればストーカーでしょう。
 街角での"お話"も続けていたハンスは、いじめられていた子のために「みにくいアヒルの子」のお話を語ります。その子の父親は新聞の編集長で、ハンスに彼のお話を新聞に載せたいと言ってきます。童話作家としての道が拓けていきます。
 やがて、マダムとニールスが旅公演から帰ってきます。二人の仲睦まじい様子から、さすがのハンスも自分の出る幕ではないと悟ります。その代わりに、ハンスは二人から別の出る幕を求められます。ハンスの書いた物語に感動した夫妻は、「人魚姫」をバレエ化したいと言い、お話の語り手として、ハンスに出演してほしいと依頼したのです。
 「人魚姫」の公演は大成功。マダムとニールスは祝いの席へハンスを招きますが、彼は頭の中に、泉のように湧いてくる童話を形にしたいと言って、去っていきます。
 再びオーデンセで、彼は子どもたちに囲まれています。既に童話作家としての名声を得ているのか、大人たちの対応も好意的になっています。ストーリーからすると、何年か経っているのではないかと思われるのですが、冒頭と同じ子どもたちです。ここで「はだかの王様」のお話をしているところへ、マダムとニールスが国王の使いとしてやってきます。ハンスは国王から「物語の王様」という称号を贈られたのです。というところで、めでたしめでたし、そして幕となります。2幕は1時間ちょっとだったでしょうか。

 合計して2時間くらいの上演時間の中に「おやゆびひめ」「みにくいアヒルの子」「人魚姫」「はだかの王様」の劇中劇があります。「みにくいアヒルの子」⇒ロンドン・ミュージカル「ホンク!」、ディズニー・ミュージカル「人魚姫」⇒「リトル・マーメイド」、「はだかの王様」⇒四季ミュージカル「はだかの王さま」へと膨らむ題材なので、短い時間でも、かなり濃厚に感じます。特に時間もいちばん長く取っている「人魚姫」はセットにも衣装にも振付にも力が入っていて、これだけで短編のバレエ作品として独立させることもできそうです。この場面は、古典的なクラシック・バレエのイメージ、コペンハーゲンの街中やオーデンセでのバレエ・シーンは、アグネス・デ・ミル振付の「オクラホマ!」の写真が動き出したように見えました。
 そのために、主人公アンデルセン自身を描いた本編は、かなり短めです。バレリーナを歌手に変えたロンドン版CDに比べると、曲数も少ないのではないでしょうか。劇中劇のおもしろさがあるので、これはこれでいいと思いますが、主人公アンデルセンの物語が若干薄く感じるのも否めません。歌の多いロンドン版の物語も観てみたい気がします。
 
 外へ出た時には、道路は既にだいぶ乾いて、空には星も見えていました。合羽を持って出なかったことを後悔せずに済みました。

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