秀山祭 九月大歌舞伎 夜の部@新橋演舞場

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 歌舞伎座が閉館になってから、初めての歌舞伎です。歌舞伎座はすっかり覆われて、建物の形はまったく見えなくなりました。解体に時間をかけるということでしたが、今はどうなっているのでしょうか。

 そういうことで、歌舞伎の公演は新橋演舞場に移っています。正月など年に何度か行われてきた歌舞伎公演で来たことはありますが、ちょっとご無沙汰で、通年で本公演が行われるようになってからは、初めてです。4時45分という中途半端な開演時間を不思議に思いながら行くと、ちょうど劇場から人が出てくるところでした。時刻は4時20分。確認すると、開場は4時30分でした。大丈夫なのかと思いましたが、案ずるより産むがやすし。ことわざの通り、スムーズに入れ替わりが進み、定刻通りに始まりました。終演が9時なら、開演を5時にして、9時15分終演でもよさそうなものですが、何か理由があるんでしょう。

 今月の公演は九月恒例、秀山=初代中村吉右衛門を記念したもので、吉右衛門ゆかりの役者、ゆかりの演目で組まれています。しかし、初代が亡くなったのは、ゴジラ誕生の年なので、残念ながら観たことはありません。今回の芝居が当たり役だったのだろうと、想像するだけです。

「猩々」長唄による踊り。酒好きの霊獣・猩々が酒売り女に勧められて、甕から酒を飲み、好い機嫌になって、酒の徳を唄いながら踊るというものです。酒売り女の出で立ちがお姫様みたいにも見えましたが、着ているものの光沢は高い身分にはふさわしくなさそうでした。2匹の猩々は鮮やかな赤い髪。にぎやかでおめでたい雰囲気を醸し出していました。

「俊寛」たぶん、これがこの公演の眼目でしょう。「平家物語」に出てくる鹿ケ谷の陰謀で、喜界ヶ島に流罪になった俊寛僧都、平康頼、丹波少将成経。赦免を待っていますが、使いの船など来はしない。心身ともに疲れ果てています。特に俊寛は服もぼろぼろ。唯一の明るい話題は、成経が島の海女・千鳥と夫婦になったこと。ささやかに祝おうとしているところへ、大きな船がやってきます。都からの使いを乗せた船で、赦免のしらせを持ってきたのですが、康頼と成経の名前だけしかありません。三人のはずというとりなしがあって、俊寛も帰れることになりますが、そうなると千鳥と成経が引き裂かれることになる。三人という人数は変えられません。千鳥が嘆き、自害しようとしているところへ俊寛が出てきます。都では妻も亡くなり、帰っても辛い日々を送るだけだから自分が残ると言って、千鳥を船に乗せようとします。少し略しますが、最後に俊寛ひとりが島に残ることになります。
 何度か観ているし、平家物語でも知っているつもりでしたが、今回は違って見えました。都からの船は、三人を連れて島を離れたら、二度とここへは来ないに違いありません。船がここへ来る来とがないというのは、都へ帰る機会は二度とないということです。帰ってもしかたがないというのはきっと本心ではない。帰っても家族はいないとはいえ、帰りたくないわけではない。それでも、残ることを選んだ。この選択は、年老いた俊寛が若い者たちのために譲ったのでしょう。しかし、実際に船が出ていこうとした時に、二度と帰る機会はないのだという絶望がやってきます。纜をなかなか放さないのは最後の未練。放した瞬間からの絶望の深さ。俊寛はこちらを向いて船に叫び続けます。客席は船、私は船に乗り込んだ康頼か成経、二度と会うことのない俊寛から目を離すことができません。やがて、俊寛には遠ざかった船が見えなくなり、呆然と海を見ています。しかし、船の上の人々には、島が見えなくなっても、網膜に俊寛が焼き付いています。呆然としている俊寛には、掛け声は似つかわしくないように思いました。




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「鐘ヶ岬」は珍しく地唄による舞で、琴が奏でられます。踊り手は芝翫。「うかれ坊主」は清元。踊り手は富十郎。80歳を過ぎたお二人は、先代吉右衛門との直接のご縁があるのでしょう。
「鐘ヶ岬」は道成寺を地唄に取り入れたものということですが、正直なところ、これはよくわかりませんでした。ただ、珍しいものを観たという印象です。
「うかれ坊主」は門づけで芸を見せて歩く願人坊主の踊りという設定で、手桶と銭錫杖をあの手この手で使い、歌舞伎の名場面を再現してみせます。「惡」という字が人の顔に見えるのがおかしい。ちょっと古いですが、大屋政子みたいにも見える衣装でした。

「引窓」は「双蝶々曲輪日記」という人形浄瑠璃原作の長い話の終幕。河内のどこかの、引窓のある大きな家ですべてが語られる世話物です。
話の前段で、人を殺した相撲取り濡髪長五郎が、この家へやってきます。この家のおばばお幸は長五郎の生みの母で、ここへ来たのは、逃げるためとも最後の別れをするためともとれます。長五郎は知りませんが、お幸の義理の息子与兵衛は、代官から十手を預けられたばかり。最初の役目は長五郎の捕縛です。
 長五郎は中二階とでもいいましょうか、居間よりも少し高いところにある部屋に隠されています。お幸は与兵衛に長五郎のことを知られまいとしますが、引窓を開けたことで、室内の明るさが変わり、長五郎の姿が鏡に映ってしまいます。
 お幸とのやりとりで、与兵衛は長五郎の存在に気づきます。なぜ、お幸が長五郎をかばうのかも察します。逃がすためのヒントを残して、与兵衛は出かけるふりをします。
 長五郎の方は、お縄にかかる覚悟を決めていますが、お幸が承知しません。逃げるために、相撲取りの前髪が残る髷から月代を剃り、大きな目立つホクロを落として、姿を変え終わったところで、やはり逃げることはできない、捕まるのなら、与兵衛にとお幸を諭します。
 ここで、引窓を含め窓が何度か動かされます。毎回、動かされる意図が違い、そのたびに別の効果が生まれます。実の母子と義理の母子それぞれの情があり、実子と義子とに互いへの敬意があり、最後は見事な絵になりました。松緑の濡髪長五郎は情があり覚悟の深い相撲取りぶり。襲名から8年経って、もうすっかり松緑の名に馴染んだようです。

 休憩時間に一階から三階まで回ってみました。三階にあった、そば食堂とおでん食堂はいつの間にかなくなっていました。全国の歌舞伎劇場にある、もなかアイスは300円。濃厚な小倉アイスでした。
 客席と舞台は、歌舞伎座に比べるとかなり小さいことに、改めて気づきました。まず、客席の天井が低い。歌舞伎座が特別に高かったのですが、かなり低く感じました。逆に小さいので舞台への距離は近かった。その結果として、芝居を近く感じたように思います。
 妙なたとえですが、舞台の大きさ、客席との距離が、歌舞伎座はメトロポリタン・オペラ・ハウス。新橋演舞場はコヴェント・ガーデンのロイヤル・オペラ・ハウスのようです。いまは歌舞伎座の代わりとして使われていますが、本来は合う演目が違うのかもしれません。

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平家女護島 俊寛
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