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zoom RSS ミュージカル「笑う男」(日生劇場)

<<   作成日時 : 2019/04/25 03:24   >>

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 映画「女王陛下のお気に入り」と同じアン女王がイギリス王だった時代の物語。


 ヴィクトル・ユゴーが「レ・ミゼラブル」の後に書いた小説が原作で、作者自身は自分の最高傑作と語っていたというけれども、日本語訳は百年近く前に出たのが最後。それはkindleにあることはあるものの、大正時代の書籍を画像として取り込んだものなので、とても読みにくい。スマホの画面で読むには英訳版の方が少なくとも目には入りやすいので、少し前からそちらを読み始めたが、20ページ(全体の8%)を過ぎても、時代背景の解説が続いていて、人物は興行師ウルシュスの名前が出たくらいで、物語はまだすこしも動き出していない。

 それでもタイトルの「笑う男」の意味はわかった。17世紀のヨーロッパには人買いが横行していて、貧しい家の子供を買い取っていた。売られた子供は金持ちの慰み者というか娯楽として使われる。多くの場合は外科的な処置で、化け物のような容姿にされる。人工的なカジモド。中国の纏足が伝わっていたのか、足を器具に押し込められる例も紹介されていた。


 この物語の主人公グウィンブレンは、幼い頃に口を大きく裂かれて、笑ったような顔にされた。金持ちは異形の子供たちに飽きると、見世物小屋へ転売してしまう。グウィンブレンの出生は貧しい家の子供たちとは違うのだが、そのことが明かされるのは物語が進んでからのこと。

 グウィンブレンは極悪な興行師に連れられていたが、10歳くらいの時に一座と逸れてしまう。船に乗り損ねたためだが、その船は遭難してしまったので、彼は命拾いしたとも言える。しかし、真冬に10歳の、化け物のような容姿の子がひとりで生き抜くのは難しかろう。たまたま拾った赤ん坊を抱いた彼は、興行師ウルシュスに助けられる。

 ウルシュスは身寄りのない10歳の男の子、盲目の女の赤ん坊を自分の元に置くことにする。そして15年の時が過ぎる。

 子供たちと出会った時、ウルシュスはひとりきりだったが、15年後は見世物小屋の主になっていて、一座には多彩な芸人たちが集まっている。グウィンブレンは一座の花形だ。

 この見世物小屋のイメージは「ラブ・ネバー・ダイ」のようでもあり、「グレイテスト・ショーマン」のようでもあり、また「ダンボ」のようでもある。いちばん近いのは「ダンボ」で、第一級のショーではないけれども、そこそこやっていける一座ではある。グウィンブレンの口はダンボの耳と同じような見世物とも言える。




 この後に起きることは、どこからが、あるいはどこまでが現実なのか幻想なのかが定かでない。

 出生の秘密が明らかになり、グウィンブレンは貴族として生きることになる。それはウルシュスとも、16歳の少女に成長したテアとも決別することを意味する。彼は単に貴族の地位や財産が欲しいわけではない。貴族院議員になれば、貧しい人たちに手を差し伸べる政策を主張することができる。
 このあたりは「レ・ミゼラブル」の中で、ユゴーが何度か主張している"政治の目的は国の富を増やすこと。増やした富は人々に分け与えられること、まず貧しい人々を助けるのに費やすこと"とつながる。

 一座の人々と離れることは、グウィンブレンにとっても辛い選択だが、彼を我が子と思って育ててきたウルシュス、彼と共に育ち、彼を愛しているテアにとっては身も心も引き裂かれる思いである。

 あの結末は悲しい物語の終わりなのか。それとも幻想なのか。幻想だとすると、誰が見ている幻想なのか。どこからが幻想なのか。
 原作には描かれているのかもしれない。しかし、ミュージカルが原作そのままというわけでもない。ユゴーが自分の最高傑作だと言っているのは、おそらく「レ・ミゼラブル」では描かなかった(描けなかった?)貴族たちの存在だろう。
 「レ・ミゼラブル」には財を成した人物は出てくるが、貴族は描かれない。革命対反革命の時代が収束して、再び金持ちの貴族と貧しい人々との対比、社会が貧しい人々に手を差し伸べることを描こうとしたのだろう。
 また、17世紀末の流血沙汰が少なかった名誉革命、18世紀初めに即位したアン女王の時代にスチュアート王朝が終焉を迎えたことを底流に置いていると考えることもできそうだ。



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