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zoom RSS ナショナル・シアター・ライヴ「マクベス」

<<   作成日時 : 2019/02/17 14:55   >>

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 上映開始時間の18時05分から"マナーのご注意映像"があって、すぐに「ナショナル・シアター・ライヴ『マクベス』」のタイトル画面が出た。本編が始まる前に、演出家(ルーファス・ノリス)とデザイナーとアドバイザー(戦場カメラマン)による解説。マクベスは11世紀のスコットランドに実在した人物で、この人物の伝説をシェイクスピアが自作の物語にアレンジした。事実としては、たぶん魔女は出てこなかっただろう。「蜘蛛巣城」を含め、何通りかの「マクベス」を観たことはあるけれども、細かなところは覚えていない。



 アドバイザーに戦場カメラマンがいるのは、美術デザインを現代の戦場、内戦で身近にいた人々が互いに殺しあう、そしてその後に残る荒れ果てた廃墟のイメージを舞台上に作り上げるためだったようだ。
 そういうことで、衣装は現代に近い。マクベスの部屋などは殺風景な中に安っぽい椅子があるくらい。百円ショップにありそうな物も見える。そのあたりは現代だが、電気の灯りはない。また武器は刃物だけで、銃器はない。戦闘はほぼ一対一のぶつかり合い、剣による斬り合いで10世紀や11世紀かもしれないが、馬に乗らず、鎧はダンボールをガムテープで体に巻くだけあたりは、かなり特殊な現代とも見える。


 血みどろの戦闘で手柄を上げたマクベスとバンクォーはダンカン王のもとへ向かう途中に3人の魔女と出会う。魔女たちは2人の先行きについて、あいまいな予言をうたう。部分的にははっきりしていて、@ダンカン王が息子を王太子に指名するAマクベスは王になるBバンクォーは王にならないがバンクォーの血筋の者が王になる。
※いままで、この魔女たちは老婆のような気がしていたが、そう決め込んではいけない。いろんな意味でマクベスを惑わす者たちである。そういえば魔女たちに名前はあったのかな。
※バンクォーはマクベスほど真に受けていないように見えるが、本心を見せていないだけとも思える。
※魔女の予言に惑わされたマクベスが、あれこれ喚き散らした後に"Come what, come may"とつぶやく。"どうとでも、なるようになれ"というような日本語訳を見た覚えがある。
「ハムレット」の"Something is rotten"と同じように、地味にというかあっさりと発せられるが、マクベスは物語が進むと"なるようになれ"と割り切ることがまったくできなくなる。
※ミュージカル・コンサートでよく歌われる"Come What May"はバズ・ラーマン監督の映画「ムーラン・ルージュ」の劇中歌だが、もとは同監督の「ロミオ+ジュリエット」のために作られた。「サムシング・ロッテン」と同じく、「カム・ホワット・メイ」も物語の方向を定める重要なひと言だった。


 ダンカン王が息子マルコムを王太子に指名したことで、マクベスは自分が王になることもあり得ると考え始める。考えるというより、その思いに縛られる。縛りは時とともにきつくなって、ついに行動に出るが、彼の神経は魔女の予言ほど強くはない。夫人は彼を支えるような、せきたてるような存在ではあるが、彼女の神経も強靭なものではない。
 魔女の予言通りに行動して、王になるまで間はまだよかった。しかし、ひとたび王になってしまうと、自分の立場を揺るがす者、揺るがす可能性がある者の存在が許せない。彼ら夫婦の不安を煽り立てるものにしかならない。

 原作の第三幕まででインターミッション。20分のインターミッションの間に、関係者のインタビューが入ることもあるが、今回は20分まるまるインターミッションだった。

 第二幕は原作の第四幕、マクベスが再び魔女を訪ね、予言の続きを聴こうとするところから。マクベスは殺した者の亡霊にさいなまれ、イングランドへ逃げた者たちが攻め入ってくるのを恐れている。夫人も心を病む。
 マクベス夫妻に味方はいない。従者は殺戮の指示を伝える役割をちゃんと果たすが、狙われた人たちに情報を漏らすこともする。夫人付きの召使が隻腕だったことに意図を推測することはできるが、これはよくわからない。
※マクベスの指示で行われた惨劇を”Dire straites”のひと言で伝える場面があった。「マクベス」ではお金はあまり関係ないけれども、Money for Nothingを思い出した。


 マクベスの折れかかった心を支えるのは、夫人の存在と魔女が言った"マクベスを滅ぼす者"が現実にはあり得ないという思いだったが、そのどちらも失われてしまう。
 マクベスは剣を振るうが、どれだけ相手を倒しても勝利はない。絶望した彼にとっての救いは、むしろ殺されることにあったのだろう。

 服装は現代だったけれども電気の灯りもガスの炎もなく、武器は刀剣のみ。「ジーザス・クライスト=スーパースター アリーナ・ツアー」と同じで、時代物を現代に投影する手法として現代の衣装を選んだのだと思う。発声はむしろ古典英語的な響きだった。

※インバネスに行った時に湖畔の城址を見に行った。土台の石が残っているくらいの廃墟だった。マクベスの城もあったのは後から知った。物語のどの時点の居城だったのだろう。
 
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