KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ「MANN IST MANN  マン・イスト・マン」

ブレヒトが1926年に発表した戯曲の物語や表現を大幅に書き換えたものと思われる。キャバレーかレストランかのウェイター、ウェイトレス、コックたちが、客の前で演じるという趣向は脚色の要素。
 人物の名前は原版のままではなく、独自に書き換えたのだろう。キャバレー・レストランに合わせてか、調味料や料理になっている。客席前方はテーブル席で、実際に料理が供される。全席に拍手音を発する道具が用意されている。
 「グレート・コメット」のエッグシェイカーと同じ用途の道具が全席にひとつずつ用意されていた(貸与で終演後に返却)。ブーイングの音がする笛は打っていたのかな。
 一方でタイトルはドイツ語のまま。Mann ist Mannを文字通りに受け取ると「男は男」、そういうセリフもあった。辞書でMannを引くと、男、夫、兵士とも出ている。

 インドのどこかに駐留しているイギリス軍の兵士たち。時代は明らかではないが、機関銃隊がいるので、第一次世界大戦くらいか。兵士たちはダラダラ過ごしている。
 ダラダラ過ごすにもお金が要るのに給金が払われない。それで4人の兵士が近くの寺院に盗みに入るが、ひとりが帰れなくなってしまう。点呼では4人いなければいけないのに、これではまずい。点呼を誤魔化すために、通りかかった男を兵士に仕立てる。最初は認識番号と名前を言うだけだったのが、帰れなくなった男がいつまでたっても戻らないので、男を引き留める必要が生じる。また男の妻が探しに来たのを誤魔化さなくてはならなくなる。
 この誤魔化しそのものは、いたっていい加減なもので、普通の時ならたぶん引っかかる人はいない。象の造形は「ライオンキング」には遠く及ばず、「どうぶつ会議」の象よりも無理がある。それでもだまされる。

 単なる一時しのぎではなく、恒久的な入れ替えのために、いくつかの段階を踏んで、男の人格は別人にを変えられてしまう。ここで「男は男」が出てくる。(妻が探しに来た)夫でもあった男はいつの間にか兵士になっている。穏やかで気の小さかった男は兵士のふりをさせられるうちに、自分の名前も家族も忘れてしまい、最も残虐で苛烈な兵士に変貌する。

 物語の結末は「キャバレー」の一幕終わりのように、音楽は盛り上がるが、拍手は躊躇する。十何年か前にブロードウェイで観た「三文オペラ」でカーテンコールを拒絶する(“とっとと帰れ”と字幕が出た)終わり方があったのを思い出した。これはそこまで強い拒絶はしない。


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Three Penny Opera / Berlin 1930
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