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zoom RSS 「ボンベイ・ドリームス」@東京国際フォーラム ホールC

<<   作成日時 : 2015/02/07 20:22   >>

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 このミュージカルはロンドンでもブロードウェイでも観ました。もう十年以上前のことなので、物語の記憶はかなりあやふやですが、「シャカラカ・ベイビー」など強烈な印象の曲がいくつかありました。「ムトゥ 踊るマハラジャ」のA.R.ラーマンの音楽なので、音楽からイメージするのは確かにボリウッド映画なのですが、脚本はアメリカ人のトマス・ミーハンとインド系とはいえイギリス生まれのミーラ・シオールで、インドそのものではなくイギリスやアメリカのフィルターがかかったインドです。

 ロンドンとブロードウェイも同じではありませんでした。ロンドンの劇場は客席にインド系の人が多かっただけでなく、案内係や売店の人たちもだいたいみんなインド系でした。ブロードウェイではそこまでのことはありません。歴史上のインドとのつながりの違いから、インドに対するイメージの持ち方も違いが生まれたのでしょう。youtubeで「シャカラカ・ベイビー」の映像を検索してみたら、ロンドンのラニはボリウッド映画のヒロインに多い、ボリューム感のある体型でしたが、ブロードウェイはいわゆるダンサー体型に近い。千手観音の振付は共通していますが、ロンドンの方がボリウッド色の濃さを感じます。

ロンドン(舞台映像)


ブロードウェイ(メイシーのサンクスギヴィング・パレード)


プロデューサーのアンドリュー・ロイド=ウェバーのテレビ番組での映像。


 物語の原案はインド出身でボリウッドでも撮ったことのある映画監督シェーカル・カプール(「エリザベス」正続など)なので、ボリウッド映画の典型的な物語の進め方や描き方を織り込んでいるのでしょう。悪役の暗躍をヒーローが打ち破り、ヒロインと共にハッピーエンドを迎える。CDのライナーにはキャストの写真と役名の他に、The HeroとかThe DreamerとかThe Big BossとかThe Heroinとか添えられています。スラムの住人でBombayをボンベイと呼ぶヒーローとムンバイと呼ぶ富裕層のヒロインとの対比も含めて、あえてステレオタイプ風に見せているのだと思います。それは単なるステレオタイプではなく、ハッピーエンドの哲学を映画監督のマダンに語らせたり、その娘のラニにはハッピーエンドは陳腐と批判させたり、ハッピーエンドの映画しか観たくないとアカーシュに言わせたりすることで、ボリウッドへの批評になっています。

 スラムの住人たちはガネーシャに祈るヒンズー教徒もアッラーを信仰するイスラム教徒もターバンを巻いたシーク教徒も、穏やかに和やかに暮らしています。共通の敵は貧困と、富裕層による開発工事で生活が破壊されることです。そこから抜け出したいと思っていても、その方法がありません。しかし、ヒーローのアカーシュはキャンディードのように楽天的です。キャンディードもいろいろ辛酸をなめても楽観主義はなかなか変わりませんでしたが、アカーシュも同じです。実際にチャンスをつかみ、映画スターになりますが、そこで富裕層の裏側、暗黒面を目にします。そして戦わなければならない動機も生まれる。悪を打ち破り、勝利の喜びに酔い、やがて馬か船で去って行ったら、それはステレオタイプと批判されるところですが、ここではスラムに帰ってくることで、最大の敵である貧困との闘いがまだ続くことを暗示する、苦みの残るハッピーエンドになっています。

 善と悪、富と貧、男と女、その対比が作るドラマはインドでもイギリスでもアメリカでも日本でも表面的には違っていても、大枠・大筋では成り立つものでしょう。ここで、最初に書いたロンドンとブロードウェイとで違っていた話に戻ります。
 ロンドンやブロードウェイではインド系の掘りの深い顔の人たちが演じますが、日本では個人差はあるものの概ね平たい顔で、インドの人たちとは違います。また、日本には天竺と呼んでいた時代からのインドとの長い長い歴史があります。イギリスのように直接のふれあいやつながりではないですが、仏教が伝わり、仏教説話やヒンズーの神話などさまざまな物語が伝わり、独特のインドに対する幻想のようなものがあります。イギリスのフィルターのかかったイギリスの話ならいいのですが、イギリスのフィルターのかかったインドのイメージはそのまま日本で再現するといろいろずれができて、全体がちぐはぐなものになっていたのではないかと想像します。

 楽曲や振付には西洋から東洋を見た時の異国風味ではなく日本からインドに感じるエキゾチックさがありました。富裕と貧困の落差は現代のロンドンとも日本にもないものですが、洋の東西を問わず古典的な物語にはつきもので、ボリウッド世界にはなじむ。カレーうどんのように、スパイスとかつぶし出汁とがうまいいことまざりあっていたようです。


 
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