「コーラスライン」@劇団四季自由劇場

「コーラスライン」は何度観たことか。常に感動して満足して劇場を出てきたわけではありませんが、それでも観るたびに何らかの発見はあります。今回はキャストの大幅な入れ替わりがあったようです。

 毎回疑問に思うのは、このオーディションはどういうミュージカルの出演者を選ぼうとしているのだろうということです。男女4人ずつのコーラスダンサーがいて、彼らにもセリフがある。彼らの動きはきれいに揃うことが求められている。「ONE」は劇中というかフィナーレ・ナンバーらしい。メインキャストがどんな人なのか、ストーリーはどんなものなのか、そのあたりの手がかりは不足していて、答は出ないと承知してはいますが、ちょっと考えてしまいます。ダンサーたちに身の上を語らせるのは、作品の内容と関係があるのでしょうか。

 わからないので、訊かれたダンサーたちも戸惑っています。最初の人は何を言っていいのかわからなくて、半ばパニックになっています。他の人たちは自分が受かるかどうかだけを気にしていて、話なんか聴いちゃいません。2人目になると、自分の順番が終わった最初の人には他人の話を聴く余裕が出てきています。他の人たちは余裕はないままですが、自分が当てられた時の参考にするため、話に耳を向け始めます。"At the Ballet"になると、関係のない他人の話ではなく、自分も同じだという共感が生まれています。そしてその共感が広がって、心の奥の深いところまでさらけ出す。最初は番号で呼んでいたのが、いつの間にか名前を呼ぶようになっている。
 ふつうのドラマであれば、気持が通じ、内面を理解することで、互いの関係が深まったところで、暖かな結末を迎えることになりそうなところですが、この作品では、人数を半分に絞って合格者を選ぶという、一見冷徹なものです。作り上げられるのはカンパニーであってファミリーではないとも考えられますが、ひとつの作品のカンパニーではないけれども、ブロードウェイのファミリーであることの確認なのかとも思いました。
 冒頭の場面で、ブロードウェイの経験がないと答えた人は残れませんでした。ハリウッドから戻ってきたキャシーはブロードウェイのファミリーに残りたいと懇願しました。それが証拠になるわけではありませんが、残った人にも残れなかった人にも情がかけられていることは感じました。
  表面上はダンサーがオーディションを受ける過程が描かれていますが、単なるダンサーの物語ではなく、共感が生まれていく物語であり、挫折した仲間に対する情の物語でもあると思います。

 しばらく前から気になっていたのは、生年月日が初演当時のものではなく、現代に合わせたものになっていることです。多くの人が1980年代の生まれだと言っています。オーディション会場には時代を示すものが何もないので、初演当時の1940年代とか1950年代の生まれと言われてしまうと、それはそれで戸惑いがありそうです。ただ、話の端々に出てくる、テレビ番組の名前、有名人の名前に違和感が生じてしまいます。
 現役で活動しているチタ・リヴェラやバーブラ・ストライザンドはいいのですが、スティーブ・マックィーンに憧れたと言われると今の映画ではなく古い映画が好きなのかと受け止めます。バスでニューヨークに着いた時の所持金が85ドルは、現代の貨幣価値だと1日ももたないでしょう。薬を飲む時の「誰か水をくんでこい」も今ならそれぞれがペットボトルをもっていそうです。医者への電話も携帯でかけるでしょう。
 といって、すべてを現代に合わせるのがいいとは思いません。無理に合わせようとしたら、それはそれで不具合が生じそうです。でも、前回まではあったと記憶しているエド・サリバン・ショーがなくなっていたので、少しずつ変えていくのが妥当なのかもしれません。
 次回公演の時には、どこが変えられるでしょうか。こちらはどういう受け止め方をすることになるでしょうか。


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