納涼歌舞伎第三部「狐狸狐狸ばなし」@歌舞伎座

歌舞伎座納涼歌舞伎第三部です。新しい歌舞伎座になってから初めて1階で観ました。始まってから気づいたことですが、新しい歌舞伎座になってから初めての舞台転換のある芝居でした。今回は転換のたびに暗転していたのですが、これは昭和36年初演の芝居だったからでしょうか。客席から見えているところで、舞台が回り、ござをさーっと敷くところも歌舞伎の楽しみなので、明るいところでの転換がある芝居も観たいものです。

 さて「狐狸狐狸ものがたり」の作者は北條秀司で初演のキャストは山田五十鈴、森繁久彌、三木のり平といった面々。初演当時は大阪の話だったのを、歌舞伎にする時に江戸に移し替えたものだということです。題名からしてユーモラスな物語を想像していましたが、始まりはいろいろと受け取りようがありそうなものでした。

 役者くずれの手拭い染屋と女郎上がりの女房。亭主は女房にぞっこんのようですが、女房の方は近所の寺の坊主と浮気の真っ最中です。この坊主に成金の娘のところへ婿入りする話がもちあがり、女房が自分と一緒になるように迫ると、坊主は亭主を始末してから来いと、おそらくかわしたつもりなのでしょうが、この女房はそれを真に受けて、亭主に毒を盛ってしまいます。
 と、愛欲のもつれから亭主を殺すという、週刊新潮の黒い報告書のように物語は始まります。焼き場をさっさと引き払って、女房は大喜びで、坊主はとまどい気味に寺へと帰ってきます。ところが、ここで何事もなかったかのように、死んだはずの亭主が現れる。しばらく怪談めいた場面が続き、やがて

 話の中身は何も知らずに観るのがいちばんです。2回目には2回目のおもしろさはありますが、いろいろと仕込まれているものへの驚きを大切にするべきでしょう。2回目の楽しみは2回目にとっておけばいい。

 で、いろいろあって、最後に幕が引かれると、やはり「狐狸狐狸ばなし」という題名から受ける印象を裏切らない芝居だったことがわかります。だれが狐でだれが狸か、狐と狸とどっちが上手か、艶笑喜劇らしくもあり、怪談らしくもあり、とにかく笑った笑った。ぜいたくなくらいに盛りだくさんで楽しい芝居でした。




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