映画「レ・ミゼラブル」その1 舞台版と映画版

 ミュージカル「レ・ミゼラブル」映画化の話は、前から何度も出ては消えが繰り返されていたので、今回も半信半疑でした。現実感が出てきたのは、主なキャストが発表になってからです。通常なら、PR映像が出てきたり、サントラCDの発売という段階があるのですが、アン・ハサウェイが歌う"I Dreamed a Dream"をのせた短い映像ひとつだけで、そうした情報がほとんどなかったために、期待も不安も大いに膨らんでいました。公開間近になって、完成がぎりぎりのタイミングだったために映像が出てこなかったこと、同時録音のためにサントラが出せなかったことがわかってきますが、それまでに期待も不安も極大化していた自覚があります。

 舞台のヒット作が映画化されることは珍しくありませんが、25年以上のロングランが続いている作品の映画化は初めてでしょう。そもそも25年以上のロングランが続いている作品はめったにありません。不安の大きな要因のひとつに、長年親しんできた舞台のイメージと合うかどうかという点があります。舞台で重要な曲がカットされる、映画のための新曲が加えられる、どちらもよくあることです。また、舞台は通常2幕で、休憩が入ります。休憩に入る直前にはだいたい大きな盛り上がりがある。このことが、物語の流れ、音楽の流れに大きく影響します。映画「レ・ミゼラブル」は2時間40分くらいで、休憩がないという情報があったので、そのことも気になっていました。不安の方は、頭で考えた結果として出てくるものですが、期待は理屈になりません。慣れ親しんできた舞台作品が、どんな映像・音響で出てくるのかを想像しただけで膨らんでいました。

 観て思ったことはいろいろありますが、大きく分けると3点です。
1)クローズアップの効果 2)曲順の入れ替えの効果 3)原作・舞台版・映画版の関係

 クローズアップについては、同時録音との関係でも言われています。それもありますが、それよりも最初のLook Downの第一声の時に、ジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)のアップが映し出されたことです。舞台では、囚人たちの中にジャン・バルジャンがいることはわかっていますが、彼に注目が集まるのはジャベールとのやりとりになってからです。映画は、第一声でジャン・バルジャンをアップにしたことで、この物語の主人公が彼であることを明確にしているのだと受け取りました。同時録音の効果は、歌の表情と俳優の演技とが一致しているところにあるのだと思います。その演技を存分に見せるには、クローズアップの必要があったということでしょう。従来の事前録音に合わせる撮影は、早めにサントラCDを売り出すのにはいいですが、どういう演技をするのかを、実際に撮影するよりもずっと前に決めなければならないのが難点です。海や雨の音で、同時録音がうまくいかなかったとしても、撮影後に歌を録り直せば、演技と歌とを一致させることは可能ということになります。

 曲の位置が変わったのは、ファンテーヌ(アン・ハサウェイ)のI Dreamed a Dream、エポニーヌ(サマンサ・バークス)のOn My Own、学生たちのDo You Hear the People Sing、それに休憩前の盛り上がり曲ではなくなったOne Day Moreも、そうかもしれません。いちばんわかりやすい効果はファンテーヌで、舞台ではまだ工場から追い出されただけなので、歌はまだ穏やかです。映画では首飾りを売り、髪を売り、歯を売り、身を売った後、つまり、"地獄のような生活"に堕ちた後なので、後半の表現が激しいものになっています。People's SongとOne Day Moreの入れ替わりは、休憩なしの物語と音楽の流れに沿わせたものでしょう。People's Songは運動への意気込みを歌うよりも、蜂起のきっかけにふさわしい。またOne Day Moreは舞台と違って、居場所がみな違うので、気持の高揚はありますが、一体感は抑えられ、物語の切れ目にはなりません。エポニーヌの場合は舞台よりも複雑な気持になる状況です。プリュメ街を離れる時、彼女はマリウスに宛てたコゼットの手紙を見つけます。原作通りだと、彼女は字が読めないので、内容を理解しているかどうかは分かりませんが、大事なことが書かれていることはわかっているでしょう。この場合、"there's a way for us"の意味が変わってきます。舞台では強がりで言っているようですが、映画では手紙を隠すという方法がある。ジャン・バルジャンが、別の男がジャン・バルジャンとして逮捕されたと知った時、マリウスの手紙を読んで、放置すればコゼットをさらっていく若い男は消えると考えた時と共通する、いわゆる"悪魔のささやき"を受けたわけです。サマンサ・バークスは舞台でもエポニーヌ役の実績があるので、キャメロン・マッキントッシュやトム・フーパー監督が、あえて違う演技を求めたのかもしれません。ガブローシュ役のダニエル・ハトルストーンも舞台・映画で同じ役を務めていますが、ガブローシュも舞台とは違う役割を求められているようです。

 原作との関係は、舞台のための脚色で割愛された要素、変更された要素のいくつかが、映画で復活したということです。新しい曲Suddenlyが加わって、テナルディエの宿屋からパリへの道中、パリ市中での逃避行の末に修道院へたどり着くこと、修道院でのフォーシュルバンとの再会、舞台では完全に存在が消されているマリウスの祖父ジルノルマン氏。それにエポニーヌがマリウスを守ろうとして、彼に向けられた銃口を自分の方へ引き寄せて撃たれること、マリウスからコゼットへの手紙を届けるのがガブローシュであること。舞台を見慣れるうちに、曖昧な、説明不足な箇所にも慣れてしまっていましたが、そうした隙間を少し埋めようという意図があるのかもしれません。長大な原作すべてを盛り込むのは無理ですが、舞台版にない要素は確かに必要でしょう。

 既に何度か観ていて、きれいなものもきたないものも具体的に、はっきり見えてわかりやすい、独自の解釈もあるという映画版ならではのよさも感じ取ったつもりでいますが、毎回思うのは舞台版を早く観たいということです。表現に空間利用の限界がある中で、想像をふくらませて補う舞台ならではのよさも感じたい。舞台が始まったら、今度は映画が観たくなるかもしれません。 

 


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