「土御門大路~陰陽師・安倍清明と貴船の女~」@渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール

 主演の市川月乃助って、誰だろうと思ったのですが、会場に着いてポスターを見て、そういえば段治郎が襲名という記事をどこかで読んだのを思い出しました。その月乃助のほか、元宝塚のトップスター大和悠河がいたり、なかなかの豪華キャストです。この頃、公演以外のことで話題になっている俳優も出ていました。ある意味"心変わり"が物語のテーマというか根っこにはありますが、それとは関係ないでしょう。

 能「鉄輪」より、とありますが、鉄輪とはいわゆる丑の刻参りの時に、頭につける鉄の輪です。そこに蝋燭を差して、夜中の貴船神社へと出かけていくわけです。貴船神社の近くで、陰陽師・安倍清明(月乃助)は沙月(大和悠河)という女と行きあいます。女は夫を探しに来ている様子ですが、夜になってから女ひとりで来るような場所ではありません。清明は何か尋常ならざるものを感じます。女の夫・宗晴は名高い刀工(黒田アーサー)で、ある貴族から新しい刀を求められています。かれは新しい刀に取り組むことに熱意を持っていますが、その貴族が連れている女にも心を動かされているようです。沙月の疑念はやがて猜疑となり嫉妬と妄執へと膨らみ、そのために鬼女に取り憑かれることになります。
 宗晴は沙月と夫婦別れをして、新しい女と暮らしはじめ、刀に魂を込めようとしますが、鬼女の気配を覚えます。先妻の仕業と考えた宗晴は、安倍清明に助けを求めます。清明が訪ねると、沙月は一見静かに暮らしている様子ですが、何かただならぬものを感じます。やがて、彼女は鬼女へと化身し、清明と術をもって闘うことになります。

 能楽の物語に想を得たということで、この舞台も能楽と同じように物語と踊りとの組合せで成り立っています。現実の世界はセリフ劇として進み、鬼との対決は踊りにより表現されます。歌舞伎の月乃助と宝塚の大和悠河とのセリフのやりとりは、それぞれの出身母体での修練が生きたものなのか、ちかごろめったに見られぬ、あるいは聴かれぬ明瞭の響きが印象的でした。
 これは平安時代の物語ですが、心変わり、嫉妬、妄執は時代が変わっても変わらないものでしょう。当時、艶聞というか醜聞で話題になっていた俳優が「女とは恐ろしいものでござりまするな」とセリフを言うと、客席には微妙な空気が流れ、清明が「女にはお気をつけ召されよ」と応じるとクスクス笑いが起こりました。さらに月乃助が「まこと女にはお気をつけ召されよ」と加えると、笑いは爆笑に発展しました。それだけ、現代にもよくあることということでしょう。まさに自分の身に起こっていることで話題になっている俳優が言ったのはできすぎでしたが。


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