「間奏曲」@劇団四季自由劇場

 これも初めて観る芝居。タイトルを見た時は、イングリッド・バーグマン主演の同名映画と同じ原作なのかとも思いましたが、全くの無関係です。あちらはスウェーデン映画、こちらはフランスのジャン・ジロドゥの戯曲です。

 20世紀初めのフランスの田舎町。美しい森に囲まれ、良くも悪くも保守的な穏やかな人々が住むところです。イザベルという若い女性が、制服の女学生を連れて、森へ来ています。この森には幽霊が出ると噂され、保守的な大人たちはその噂を否定しようとしていますが、イザベルは幽霊に会っていると子どもたちに話しています。彼女は幽霊に、というより人智を越えた存在への憧れを持っているようです。町はその程度のことでも問題視する人たちがいるようなところです。

 幽霊の噂が流れだしてから、町ではおかしなことが起こるようになりました。いつもなら金持ちに当たる宝くじが貧しい人に当たり、住民の意識調査にきれいごとの建前ではなく下世話な本音を書く人が多くなったとか。果たしてそれまでの"あるべき形"が妥当なものだったのかどうかは怪しいものです。
 町のお偉方や中央政府の官吏が集まっているところへ幽霊が現れます。かれは自分の話を聴いてくれるイザベルに、話をするので家へ訪ねていきたいと持ちかけます。イザベルは幽霊が、自分が知りたいと思っている"世界の真実"を語ってくれるものと思い、招致・承知します。

 二幕はイザベルの家です。幽霊が来ることを知ったお偉方や官吏、それに女学生までもが、約束の時間前に入り込んでいます。いまの感覚ではとんでもないことですが、この物語の人物たちにとっては、イザベルを心配するあまりの当然の行動のようです。イザベルは幽霊が語る真実に期待を抱いていますが、訪ねてきた幽霊は森にいるときと違い、単なる誘惑者に堕していました。死に魅入られてしまったイザベルは気を失います。幽霊に魂の一部を奪われたような状態なので、このままでは幽霊の世界へと連れ去られてしまうのかもしれません。
 町の人たちは彼女を現実の世界へ引き戻そうと、生活の音を響かせ、生きる喜びを歌い出します。また中央政府から来た官吏は、彼女を一目見た主観から恋に落ち、生涯を共にしたいと語り始めます。イザベルを幽霊の世界から呼び戻され、幽霊は現実の世界から追い出されていったのでした。

 一幕は昼間なのに、幽霊に似合いそうな薄暗い森の中でした。二幕は夜になっているのに明るい部屋の中です。どちらも現実感に乏しい、奇妙な寓話的な世界を作り出していたようです。
 イザベルは現実の世界へ帰ってきますが、官吏の人生はともかく、金持ちにだけ宝くじが当たるという現実の世界です。皮肉や風刺なのか、それとも現実とは身も蓋もないものという真実が語られているということなのでしょうか。
 

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