「カルテット!」@東京グローブ座

 ミュージカルと呼ぶのが妥当かどうかは疑問ですが、音楽の生演奏と歌によって物語が進んでいく舞台です。崩壊の危機を迎えている音楽好きの四人家族の物語で、四人は俳優が演じ、同時に四人の演奏家が彼らの分身となっているという構図です。

 両親はともに音楽大学に通っていましたが、在学中に子どもができたことで音楽家を断念。いまは演奏することもほとんどありません。フルートを習っていた高校生の娘も、いつの間にか音楽から離れてしまっています。中学生の息子はバイオリンを習っていて、周囲からは期待され、彼自身もプロのバイオリニストになりたいと思っているようです。
 それなりに幸福だった家族ですが、父の失業により状況が変わります。両親の間はギクシャクしてきて、ついには離婚という方向に動き出します。派手な服装で遊び歩く姉。バイオリンの才能を認められてる弟と自分とを引き比べて卑下する気持になっているところもあるようです。
 バラバラになっていく家族を何とかしたいと考えた少年は、自分が幼かった頃のように家族四人のカルテットで演奏することを思いつきます。一緒に演奏することによって、家族の関係は変化し始めます。おばあちゃんの誕生日に市民会館の小ホールで演奏会を開こうという話も出てきます。
 並行して、バイオリニストへの道も開けてきます。子どもたちの才能を引き出すことに熱心な大物指揮者による演奏会に出演しないかと声がかかります。しかし、それは家族コンサートと同じ日でした。
 どちらを選ぶかという話で、まとまりかけているように見えた家族はまたバラバラになってしまいます。子どもたちにはいちおう秘密になっていた離婚の話が公然のものになり、もう元に戻ることは難しそうです。家族の話し合いで、少年は大物指揮者の開くコンサートに出演、家族コンサートはあとの3人でということになりますが、子どもたちの気持は揺らいでいます。はたして、どうなるのでしょうか。

 演奏されるのはクラシックの有名曲で、それに歌詞がつけられています。分身の音楽家たちが演奏し、俳優たちが歌います。知らない曲なら印象が違ったかもしれませんが、よく知っている曲なだけに、歌は聴いていてかなり厳しいものがありました。演技がよくても、ここは通常のミュージカル以上に高い歌唱力がないと楽曲が生きてこないように思います。
 物語の展開にも難があります。姉と弟とのコミュニケーションがうまくいっていないという状況で、弟は自分が見つけた離婚届のことを姉に話していません。ところが姉はいつの間にか知っています。むろん独自に離婚届を見つけていたということがあってもいいのですが、ただフラフラ遊び歩いているところしか見せていないので、両親の不仲について彼女なりに心を痛めていることが伝わってきません。また、演奏会の当日、大物指揮者から「よし、本番もその調子で」と言ったリハーサルの演奏を、バイオリンの先生が「気持が集中できてない。全然だめ」と指摘してしまうと、その指揮者はいったい何なの?ということにならないでしょうか。

 俳優が演じるカルテットと、演奏者のカルテットとが同じ舞台上にいるというアイディアは面白かったですが、その面白さが十分に生きていたかどうかとなると、少々疑問に思いました。

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