「寿初春大歌舞伎 夜の部」@平成中村座

 前に花道側の席にぎりぎりで着いた時は、登場する出雲の阿国がこちら側を向いている前を歩くことができずに、しばらく動けませんでしたが、今度は反対側の席です。余裕のある時間に着けばいいのですが、昼4時開演だと、どうしてもこういう事態が避けられないことがあります。多少の余裕はあったのですが、入口近くの売店で梵のビーフへれかつサンドを買っている間に太鼓が鳴りだしてしまいました。

 最初は正月らしく「寿曽我対面」。十郎祐成(勘三郎)、五郎時致(橋之助)、工藤祐経(彌十郎)。十郎と五郎の兄弟が、目指す仇の工藤と出会ったものの、富士の麓での狩を仕切るという大役があるので、それが済むまで待てと言われる。兄弟はそれを受け入れ、後の再会を約束して別れるという、理屈で考えると変な話です。
 曽我兄弟の仇討は、鎌倉時代の初めに実際にあったことです。仇討そのものはシンプルな話ですが、背景については史実でもいろいろな説があるらしく、その謎の部分から憶測が広がり尾鰭がついて、物語が成立していったのでしょう。「助六」も正体は五郎時致で兄の十郎も出てきますが、鎌倉時代の話には全く見えません。荒っぽい五郎とやさ男の十郎という組合せは、この「寿曽我対面」と共通しるようです。
 今まで気がつかなかったのですが、五郎時致の隈を見てウルトラマンを連想しました。ウルトラマンのデザインが歌舞伎の隈にヒントを得たものなのかもしれません。

 続いて「お染の七役」。お染久松の物語は「野崎村」の思い込みがあったので、最後に舟で川を下っていくところは舞台奥が開いて、外の隅田川を見せるに違いないと想像していました。
 始まってみると、お染久松の物語には違いはなく、お光も出てきますが、大阪の之崎村ではなく、江戸の話になっています。七役をつとめるのは七之助。始まって10分くらいの間に、商家のお嬢さん(お染)、丁稚(久松)、武家の女性、村娘(お光)、芸者に早変わり。通常、歌舞伎では主な人物の出入りはほとんどが花道、舞台袖への出入りは珍しいのですが、早変わりのためか、この芝居では右へ出たり左へ出たりです。早変わりの仕掛けはだいたい見当がつくので、たいへんだなぁとは思いつつも、さほど驚きはありませんでした。最後の幕までは。
 お染も久松もひとりで演じているので、これはずっと二人がすれ違って会えないというドラマになるのかと思っていたのですが、最後の幕で、舞台の万かに出ているままでお染から久松に変わるというアクロバットのような技があったのでした。
 早変りが、物語の上でどういう意味があるのかはよくわかりませんでしたが、観ていてワクワクあるいはハラハラするおもしろさがあるのは確かです。

 結局、後ろは開かず、現実の隅田川を背景にした芝居、にはなりませんでしたが、開けたらきっとかなり寒かっただろうと思うので仕方がありません。スカイツリーが完成する、4月5月の公演ではまた開くでしょうか。

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