「新宿狂言Vol.16 森羅万象~ぼくらはみんな生きている~」@スペースゼロ

 Vol.16とありますが、私は初めてです。ずっと年に一度の恒例として行われていたのが、前回から2年8か月空いてしまい、さらに今回が最終回になるのだそうです。
 狂言の公演ですが、能舞台の設えはありません。通常の演劇公演が行われる時と同じような舞台です。橋掛かりがなく、屋根も柱もありません。その代わりに装置や照明効果や映像を使い、狂言を伝統芸能としてではなく、演劇として"演出"しようという意図があるようです。能楽堂で観ている時は気になりませんが、現代演劇で使われるような舞台で、橋掛かりをゆっくり歩くような登場をしたり、「やるまいぞ、やるまいぞ」と言いながら揚幕へと退場していくのは合わないかもしれません。

「川上」
 人形浄瑠璃や歌舞伎や浪曲で知られる「壺坂霊験記」と設定が共通しています。登場人物は大和国吉野に住む盲目の夫(野村万作)とその妻(石田幸雄)。山奥の川上というところにある地蔵菩薩にひとりで参詣すると、目が治ると聞いて、男は妻に見送られて川上へと出かけます。苦労の末にたどり着き、寺に籠る。夜が明けると男の目は見えるようになっている。杖を投げ捨てて帰る途中、迎えに来た妻と出会う。
 「壺坂霊験記」だと、途中はともかく最後は夫の目が見えるようになってめでたしめでたしとなりますが、こちらはそうはいきません。地蔵菩薩は男の目が見えるようになるには、妻と別れることという条件をつけていたのです。夫の目が治ったことを最初は喜んでいた妻でしたが、その条件を聞くと激怒し、絶対に別れるものかと主張します。夫はそれを聞きいれますが、そう決めて歩き出した途端にまた目は見えなくなってしまいます。二人はそれも仕方がないと手をとりあって帰途につきます。
 地蔵に悪態をつく妻などユーモラスなところはありますが、笑って終わる喜劇ではなく、しんみりとしたところのあるcomedyといったところでしょうか。橋掛かりを退場していくのではなく、舞台奥へ後ろ姿で消えていく形にしたことで、様式を越えた悲哀と情感が浮かび上がってきたようです。

「茸(くさびら)」 
 こちらは一転してスラップスティック・コメディです。ある男の屋敷に、謎の巨大キノコが出現し、取っても取ってもまた生えてくる。通りすがりの山伏(野村萬斎)に祈祷を頼みますが、この山伏が呪文を唱えるほどに茸は増え続け、ついには動き出して山伏に襲い掛かります。ほうほうの体で逃げていく山伏、つまり茸の圧勝に終わります。
 通常は舞台の上にたくさんの茸が現れるだけですが、この会場での特別演出として、客席も茸だらけになります。各席に紙の笠が用意されていて、合図とともに客席全員参加で茸となり、さらに舞台奥に鏡が置かれて、場内の茸度が倍増する仕掛けがなされていたのでした。

 終演後に、野村萬斎を中心にしたトークショーがありました。内容は過去の映像を紹介しながら、新宿狂言の歴史を振り返るというもの。要するに、新宿狂言とは、狂言と現代演劇の技法手法を組み合わせる実験という性質のものだったようです。今まで観られなかったのが残念。これが本当に最後ならなお残念。


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