「オペラ座の怪人」@電通四季劇場・海

 ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで、25周年記念コンサートが開かれたのと同じ10月1日に初日を迎えた、東京の「オペラ座の怪人」。観に行ったのは初日ではなかったですが、新しいファントムがデビューした日でした。この日の観劇に備えていたわけではないのですが、先月から手持ちの各種「オペラ座の怪人」CDを聴いたり、youtubeにアップされたコンサートのカーテンコールでの熱唱を観たり、久しぶりにガストン・ルルーの原作を読んだりしていたせいか、劇場に着いた時からかなり気持が昂ぶっていました。
 「オペラ座の怪人」」を観るのは何年ぶりになるか。最後に観たのは、ブロードウェイのヒュー・パラーノが降板する少し前でした。どうでもいいことですが、ロンドンでも何度か観ているので、三都市を制覇したことになります。同じ曲、同じ演出なのですがすべてが同じというわけではないのが興味深いところです。
 上にガストン・ルルーの原作と書きましたが、何かで読んだ記憶ではアンドリュー・ロイド=ウェバーは小説から発想を得たのではなく、テレビで見たロン・チャニー主演の映画「オペラの怪人」(1925)が出発点だったそうです。ガストン・ルルーの小説は、パリのオペラ座地下に住む怪人による歌姫誘拐と、彼女の恋人による決死の奪還にほとんどのページが費やされていて、最後に取ってつけたように、怪人が歌姫への真情ゆえに破滅したことが書かれていますが、映画化にあたって、怪人と歌姫との情がふくらませられていったのでしょう。同じ原作から出発しているはずのアーサー・コピット版「ファントム」では歌姫は貴族よりも怪人を選んでいました。そういえば来日公演のあったケン・ヒル版というのも観ましたが、これは滑稽味を濃くしたものでした。すっかり忘れていたのですが、ケン・ヒル版で印象的だった、原作にもちゃんと書かれている、首にひっかけるワナを避けるための妙な姿勢をロイド=ウェバー版でもちゃんとやっていました。

 さて、今回の劇団四季版「オペラ座の怪人」。競売が始まり、猿のオルゴールが出てくるあたりからワクワクしてきます。やがて、オークション番号666のシャンデリアが上がる。劇場が新しいのが難点なのですが、序曲が始まると「オペラ座の怪人」の世界に入り、舞台の上だけしか目に入らなくなります。
 上にも書きましたが、新人怪人(大山大輔)初出演の日でした。クリスティーヌ・ダーエ(笠松はる)は名古屋や京都でも演じているそうですが、観るのは初めてです。ラウル・ド・シャニー子爵(中井智彦)も同様だそうです。メインキャスト3人とも20代の若い「オペラ座の怪人」です。大山、中井の2人は初めてですが、笠松はるは去年の「ウェストサイド・ストーリー」のマリアで"Tonight"を歌いきったのを観てから注目しているひとなので、キャスト表を見た瞬間から大いに期待していました。タイトル曲最後の、ほとんど鳥の声のような最高音だけはか細くなってしまいましたが、それ以外は期待以上で、クリスティーヌ・ダーエの澄んだ美しい声を堪能しました。高い声でも人間の声レベルの"Think of Me"の最後はきれいに響き、クリスティーヌの澄みきった心が現れるようです。劇中劇でのコミカルなな存在感、"The Point of No Return"で相手役の正体に気づいてからの演技にも見応えがありました。
 ラウルの中井智彦は我慢役というか、二枚目役なのにあまり目立ち過ぎてもいけない不思議なキャラクターですが、常に安定したバリトンで聴かせます。背が高いので見栄えもいい。体型でラウルなのかもしれませんが、いずれは怪人の可能性もありそうです。
 怪人の大山大輔も安定感のあるバリトンです。彼にとっては初日なので、独自の緊張感はあったと思いますが、なるほどと思える怪人像でした。マイケル・クロフォードの声は金属的なところがあり、エキセントリックな感じがありますが、初めのうちはクリスティーヌは彼を音楽の天使と思いこむので、優しげな響きというのもありでしょう。動きにキレがあり、エネルギッシュな感じがして、いかにも若いファントムです。ところがラストシーンでクリスティーヌが去った後に、その若さが消え去ってしまいます。生きる意欲を失くしたように、彼自身も消え入ってしまう。そんな怪人でした。
 
 他に印象に残ったのは、メグ・ジリーの松田未莉亜。バレエ出身のひとらしいのですが、"Angel of Music"でのクリスティーヌとのデュエット(歌)が見事でした。ラストシーンに男の子の姿で現れるのは、地下へ降りるのを母親のマダム・ジリーに禁じられたので変装したということだと思いますが、そういう好奇心と冒険心と行動力のある少女らしさがあり、帽子を取って長い髪が流れ出る姿が鮮烈でした。
 ちょっと残念だったのはカルロッタです。譜面通りの高音が出ていないと怪人には嫌われているけれども、観客にはある程度の人気があるプリマドンナという設定の裏付けがなくなってしまいます。怪人が彼女を嫌うのは、歌えないからではなく、あっさり見せるべきところでロングトーンを効かせてみたり、やり過ぎるからだと思います。

 今週末にはロイヤル・アルバート・ホールでのコンサートが映画館で公開されます。客席数5000人規模で、キャスト、オーケストラ合わせて200人以上で、カーテンコールには豪華ゲストも登場というのは楽しみです。とはいえ、映画館で観るものがどれほど素晴らしいものだったとしても、時期が来ると生の舞台が観たくなるに違いありません。一度たりとも同じにはならない、無常が舞台ならではの魅力なのでしょう。


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  • 電通四季劇場[海]

    Excerpt: 電通四季劇場[海]は東京・新橋の電通本社ビルにある劇団四季専用の劇場で、2002年12月にオープン。この日は「オペラ座の怪人」を上演していた。 Weblog: ぱふぅ家のホームページ racked: 2013-06-22 15:45