「アプローズ」@ティアラこうとう

 ティアラこうとうへ来るのは、今年になってから3回目です。その前にも何度か来た記憶はありますが、今までは全部コンサートだってので、ここでミュージカルというのは初めてです。ここでは一日だけの上演ですが、全国各地での公演を経ての、大千秋楽だったようです。

 1970年のトニー賞を取った有名な作品で、ストーリーもだいたい知っているし、CDも持っていますが、実際に観るのは初めてです。ちょっと調べてみたところ、ミュージカル作品賞のほかに、大女優マーゴ・チャニング役のローレン・バコールがミュージカル主演女優賞、演出・振付のロン・フィールドがその2部門を受賞していて計4部門の受賞、7部門8つ(助演女優賞に2人)のノミネートを受けています。ほかのキャストには「フォーティセカンド・ストリート」のビリー・ローラー、リー・ロイ・リームズや「スウィーニー・トッド」のタイトル・ロール、レン・キャリオーといった人の名前が並んでいます。ダンサーの中に「コーラスライン」のポールでトニー賞を受賞したサミー・ウィリアムズの名前もありました。
 物語は1950年の映画「イヴの総て」をミュージカル化したもので、時代は1970年当時に変えられてはいるものの、大女優マーゴ(前田美波里)と彼女を足がかりにのし上がろうとする野心的な若い女優イヴ(上田亜希子)との対比で物語が進む構造は共通しているようです。

 最近はほとんどない、いわゆる序曲らしい序曲が終わり、幕が上がるとトニー賞授賞式です。演劇の主演女優賞が大詰めに来ることは、今はあまりないと思いますが、演劇に話題作が多かったり、賞レースが激烈で盛り上がっていたりしたら、そういうこともあるかもしれません。プレゼンターのマーゴが封筒を開けると、イヴの名前がありました。マーゴはにこやかにトロフィーを渡し、イヴはスピーチをマーゴへの感謝から始めます。マーゴは観客や視聴者を意識したリアクションをしますが、内心は違います。場面は、1年半前のマーゴがイヴと初めて会った時へと変わります。
 1年半前、マーゴ主演、バズ・リチャーズ(越智則英)脚本、ハワード・ベネディクト(倉石功)プロデュース、そしてマーゴの婚約者ビル・サンプソン(石原慎一)演出の新作演劇初日の夜。バズの妻カレン(平田朝音)が、イヴという若い女性を楽屋へ連れてきます。カレンはイヴが26回のプレビュー公演を毎回観に来ていたのに気づき、彼女をマーゴに会わせてやろうと考えたのです。ビルは映画撮影のため、すぐにローマへ出発しなければならず、ひとり残されたマーゴは新聞の初日評をおそるおそる待たなければならない初日パーティーへ行く気も起きず、パーティーよりも夫がベトナムで戦死し自暴自棄になっていた時にマーゴの演技を観て、生きる気力を取り戻したというイヴの話を選び、ヘアドレッサーのデュアン(佐野瑞樹)とイヴをグリニッチ・ヴィレッジのディスコへ行きます。イヴを観ていて、マーゴは自分が19歳だった時を思い出します。
 初日評は上々でしたが、マーゴはビルがいないためにナーバスになっています。イヴはいつの間にか、マーゴの付人になっていて、身の回りの世話をしたり、ローマにいるビルに連絡を取って、マーゴと電話で話せるよう手配したりします。マーゴの近しい人にも気に入られ、ハワードに若手ダンサーたちが集まるレストラン、ジョー・アレン(失敗作のポスターが飾られていることで有名。ただしセットにはなかった)へ連れて行かれたりします。デュアンはマーゴにイヴの行状を伝えますが、この時点ではマーゴはイヴを気が利く付人だと思っています。しかし、イヴがオーディションを受け、マーゴの代役に採用されると、彼女が自分を利用しようとしているのではないかとの疑惑が生まれます。マーゴはローマから早めに帰って来たビルに、イヴへの不審を訴えますが、彼は疑惑を抱くこと自体を責め、彼女に別れを告げて去っていきます。有名な「ようこそ劇場へ」はショービジネスへ食い込んできたイヴに対して、このダークな世界へようこそとマーゴがうたう皮肉な歌詞です。ここで幕。

 マーゴはコネティカットにあるバズとカレンの家に来ています。イヴの本性に気づいていないカレンは、マーゴがイヴにきつく当たっているのをかわいそうに思って、彼女が代役として舞台に立てるように、クルマのガソリンを抜いて、マーゴをコネティカットに足止めにします。バズは関与していませんが、彼も脚本の実年齢に近いイヴが演じることに興味を抱いています。
 代役は好評で、イヴは本性を露骨に現し始めます。インタビューのために訪れたジョー・アレンで、若手ダンサーたちに自分はもう仲間ではないと宣言。ハワードに代役でなく自分のための新作が欲しいと求め、脚本を書かせようとバズを誘惑。マーゴから総てを奪い取ろうとしますが、ビルだけは失敗します。
 すべてを失ったと思ったマーゴでしたが、ビルは彼女のところへ戻ってきます。人生でアプローズ(喝采)よりも重要な何かを得たと歌って幕となります。

 代役で主役を演じたことで、野心が暴走したのかとも思ったのですが、その後の展開で、26回のプレビュー公演に通い詰めたことからイヴの計画が始まっていたことが明らかになりました。だとすると、かなり確実性の薄い計略です。26回のプレビュー公演に通って、カレンの目に留まらなかったら?カレンでなくてもいいですが第一段階がかなり杜撰です。主演で舞い上がって、若手ダンサーたちに対する態度を一変させるところからしても、このイヴはあまり賢くはなく、トニー賞の主演女優賞は取りましたが、たぶん後が続かないでしょう。
 原作のタイトルは「イヴの総て」ですが、この物語の主人公は、明らかにイヴではなく、彼女に振り回されるマーゴです。マーゴも大女優と言われるまでには、「ようこそ劇場へ」でうたっているように、決して誇らしく語れないこともあったかもしれませんが、イヴのような悪辣さはなかった。最後は舞台と結婚していると言われたマーゴが、ビルの結婚を選んだような形で終わっていますが、舞台を捨ててビルを選んだのではなく、舞台(仕事)だけではない人生を選んだということなのだろうと思います。フィナーレ前のマーゴとビルのデュエット曲には"Something Greater"とタイトルがついています。

 演奏が録音であること、ジョー・アレンの壁に失敗作のポスターがないことなど物足りなく感じるところはありました。それに、毒気と皮肉が強いので、観ていて決して楽しい話ではありません。暴力や謀略などイヤな感じの要素が多いのですが、改めて思いなおしてみると、マーゴとビルの2人は、策略や騙しに関わることなく、誘惑も断ち切っています。どこかにスッキリした気持が残るのは、そのためかもしれません。


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