「ユメノナカノウツツノナカノユメ」@アトリエだるま座

 午後に降った雨は夕方にはすっかり上がっていました。どこかで、昼休みの打ち水は午後の日差しで蒸発して蒸し暑くなるだけで逆効果という調査報告の記事がありましたが、この日の雨はちょうどいいタイミングだったようです。まだ日差しは残っていましたが、乾きかけた道路に快い風が吹いていました。

 カタカナが並んだ長いタイトルは、お笑いピン芸人・快児の作・演出の芝居です。1年前にも、彼の作・演出による公演がありましたが、その時は一本の芝居というより、コントとネタを集めたバラエティ・ショーでした。

 暗い中から何人かの声が聞こえてきます。最初のうちは何を言っているか聞きとれませんが、次第に声が揃ってきて、同じ言葉を同時に言っているのわかってきます。明るくなると、壁に囲まれた部屋に5人の男女が座ったり横になった状態で眠っています。最初に若い男が目覚め、椅子で眠っていた最年長と思しき男を揺り起こします。やがて、5人とも眠っている間に、ここへ連れてこられたらしいことがわかります。理由も、なぜこの5人なのかもわかりません。

 昼間観たリーディングでト書きを読んでいたのが印象的でしたが、ここでもト書きを読む人達が登場します。キャラクターとしては眠っている5人だけなのですが、その他に正体のよくわからない3人が現れ、状況の説明をしたり、5人に課題を与えたりします。3人は、この空間が壁に覆われていること、すべての謎が解けた時に壁は破れると言って、壁の向こうへと消えていきます。
 5人の話からある共通点が見つかりますが、そのことがどう関係あるのかはわかりません。ときどき例の3人が入ってきて、お題を出していきます。その結果、5人は協力することができず、時には深刻な対立状況が生まれたりもします。

 話が行きつ戻りつして、謎の正体にはなかなか近づけません。そこがつまりユメノナカノウツツノナカノユメです。おそらく自分でも気づいていなかった心の中の一面が顕になっていきます。
 ト書きを朗誦したり、ちょっと変だと思うけれども芝居の約束事だから黙っている受け入れているような表現にあえて突っ込んでみたりするのも、これがユメノナカノウツツノナカノユメだからでしょう。最後は生真面目というかまっすぐ前向きな結論に至り、壁は破れます。
 短いコントやいわゆるネタだけだと、1時間以上はなかなかもつものではありません。剛直か柔軟かはともかく何かしら芯のある物語が、今回は必要だったのだろうと思います。ただし、その物語がまっすぐに進むようにしなかったのが、ピン芸人・快児の色なのでしょう。

 
 


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