「天守物語」@吉祥寺シアター

 吉祥寺シアターへは何度か自転車で行っているのですが、毎回井の頭通りのどこで曲がるかを迷ってしまいます。理由というほどのことでもないですが、目印にしていたつもりの東進ハイスクールの看板が二ヶ所にあることに気づきました。前回、最初のところで曲がってしまったのが間違いで、二つ目の水門通りという標識を確認すればよかったのでした。でも、反対側の五日市街道側からの方が近いかもしれない。などと考えるから、迷うことになるのです。

 今回、観に行ったのは少年社中という劇団による「天守物語」です。泉鏡花の原作通りではなく、2011年6月の今、上演するための独自のアレンジが加えられています。
 「天守物語」は歌舞伎で何度か観たことがあります。白鷺城(姫路城)の天守閣に棲むあやかしの富姫と、生身の人間である姫川図書之助との、複数の意味でのありえない恋の物語とでもいいましょうか。姫路城の天守閣はあやかしたちのもので、生身の人間が上がることは禁じられているというのがありえない。普通なら、架空の城にするところでしょうが、そこが泉鏡花です。あやかしと人間との恋というのもありえない。姿形の上でも内面においても、生身の人間にはありえない美をあやかしの世界に求めたのでしょうか。生を捨てている図書之助の姿も内面も、現実を超えた美でなければならない。そのあたりも泉鏡花なのかもしれません。
 富姫には亀姫という妹がいて、こちらは猪苗代にいます。少年社中版「天守物語」では、姫路のある兵庫県と猪苗代のある福島県とを結びつけ、16年前のできごとを物語に織り込んでいます。図書之助が天守閣へ上がる16年前に、彼の父親も天守閣へ上がり、富姫と出会ったという脇筋です。

 ここで、問題なのは「天守物語」としてどうなのか、付け加えられた脇筋が機能しているか、そして主筋と融け合っているかということです。新たな設定は、16年前との関連づけはいいとして、あやかしと人間との関係、人間を手にかけたあやかしの運命に、どうもわかりにくいところがあります。空間の使い方は、小劇場ならではの工夫があっておもしろかったですが、ドラマとしては釈然としないものが残りました。
 とはいえ、原作も筋の通った話というわけではありません。それを見せてしまうのは、歌舞伎の様式とその様式を熟知している俳優たちの力量です。
正直なところ、この日の出演者は物語上の矛盾を押し切るには、いささか力不足のように思われました。3月の出来事を織り込んでいるということは、新作の初演なのでしょう。これから回を重ねていくことで、より高いレベルのものが作られていくことを期待します。


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