「ユタと不思議な仲間たち」@四季劇場秋

 劇団四季のオリジナル・ミュージカルで初演は30年近く前ということですが、初めて観ました。舞台になっているのは、岩手県北部の湯の花村という架空の小さな村。原作者・三浦哲郎の出身地のイメージという推測はできますが、どこなのかはわかりません。湯の花というくらいですから、温泉があるのでしょう。観光化は遅れているようですが、古い離れを壊して、ホテルにする計画が陰で進んでいます。とすると、時代はバブル期でしょうか。

 状況はそのくらいに見えましたが、人間たちのありようはもう少し昔のようです。父を亡くした小学校高学年男子ユウタ(上川一哉)は、都会から母(あべゆき)の故郷の湯の花村へ引っ越してきました。既にある程度の時間が過ぎているようですが、ユウタは新しい環境に馴染めません。訛りなのか、ユウタがユタになるのも不愉快に思っています。彼を受け入れる同級生たち(鈴木怜央、厂原時也、赤間清人、柏円、齊藤舞、安宅小百合)も、違う言葉を話し、都会風の服装をしたユウタに馴染めません。馴染めないと、どうするかというと人数の多い側が少ない側を攻撃、つまりいじめます。先生(丹靖子)は写生教室での指導ぶりを見る限りでは、勉強を教えるのも、子どもたちの様子から何かを感じ取るのも、あまり向いていないようです。学校で孤立している小夜子(奥平光紀)と旅館の番頭?の寅吉おじさん(吉谷昭雄)は、ユウタの味方ですが、いじめに対しては無力です。

 学校帰りに、いつものようにユタはいじめに遭いますが、目に見えない何かが助けてくれたのに気づきます。寅吉おじさんに話すと、それは座敷わらしだろうと教えてくれます。ユウタはお礼を言うために、古い屋敷の古い座敷に一晩泊まることになります。母や寅吉がいなくなると、不思議な光とともに5人の座敷わらし(菊池正、柏谷巴絵、伊藤潤一郎、和田侑子、道口瑞之)が現れます。

 この物語の座敷わらしは、江戸時代以前に起きた飢饉の時に餓死したり、間引きされた男の子の魂です。(女の子には身売りという道があるので、間引きはされない)せっかく生まれたのに、生きることができなかった彼らは、いじめが辛くて、生きているのがイヤになったというユウタに生きていられることの価値をうたいます。また、彼らは都会とは違う、湯の花村で生きる知恵と力をユタに教える。彼らにユタと呼ばれても、ユウタは不愉快には思いません。

 座敷わらしたちの助けで、ユタは知力面でも体力面でも、湯の花村で生きる術と力を身につけていきます。いじめっ子たちに正面から立ち向かえるようになるころには、彼らもユタを受け入れられるようになっています。
 ユタの自立の時は、座敷わらしたちの旅立ちの時でもありました。彼らの住みかである座敷が取り壊され、鉄筋の建物に建て替えられるために、居場所がなくなってしまうのです。座敷わらしたちの"学校"を卒業したユタは、彼らの旅立ちを見送ります。


 どういう作品にも言えることですが、観るタイミングによって受け止め方が大きく変わることがあります。この作品の場合は、東北が舞台ということと、生きたかったのに生きることができなかった子どもたちの魂が、強く響いてきました。何でもない時だったら、前に遠野で聴いた南部訛りの柔らかさや座敷わらしの物語を思い出したかもしれません。学校でのいじめの問題がニュースになっている時だったら、その点に注目したかもしれません。古い建物が壊されて座敷わらしたちが出ていかなければならなくなるというところが気になったかもしれません。
 ここで描かれている東北は、現実のものではなく、原風景としての東北でしょう。田畑、山林が広がっていて、鳥の声が聞こえる。突然の雨や強い風は自然が美しくやさしいだけではなく、時に厳しいものでもあることの表れとも思えます。それは東北が舞台でなくても思うことですが、今は東北で起きていることから現実の自然が、さらに過酷な顔も持っていることへ思いが広がります。
 南部訛りを生かしているとはいえ、たいていの言葉は聴いてわかるようなものが選ばれています。訛りの強い方言は、響きが美しい一方で、言葉が強く伝わるようです。例えば座敷わらしから教わる「ワダワダ、アゲロジャ、ガガイ」。呪文のように響きますが、「母さん、母さん、戸を開けておくれ」というような意味だそうです。カギをかける習慣ができたのは、それほど古いことではないでしょうから、これは座敷わらしたち、家から締め出され、入れてもらえなかった子どもたちの哀しみを表したものなのだと思います。その気持の強さが呪文としても強い力になったのかもしれません。
 
 プログラムを読み返したら、上演を決めたのは震災の後ということです。
東北での公演予定もあるそうです。今回のキャストには東北出身者が多いともありますが、セリフや歌としては、訛りのある言葉が残念ながらまだギクシャクした感じになっている人もいました。公演は始まったばかりなので、今後の変化に期待します。


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