「ウェディング・シンガー」@シアタークリエ

 入口に貼ってあるポスターで公演日程を見たら、3月11日には13時30分開演の公演がありました。上演予定時間を考えると14時46分は休憩に入る頃だったのでしょうか。ちょっとの地震なら、そのまま進行だと思いますが、さすがにあの揺れだと中断でしょう。その後も、停電情報による公演中止も何度かあったようです。私が観た日は、ほぼ満席でしたが、聞くところによると震災以後は半分かそれ以下ということもあったそうです。そんな状態では、公演を続けても収益は出ない、というよりも完全に赤字に違いありません。

 「ウェディング・シンガー」は1998年の同名映画を原作にしたミュージカルです。2006年にブロードウェイ初演。トニー賞ではミュージカル作品賞はじめ5部門にノミネートされています。私はその年の5月に観ました。受賞ゼロは予想通りでしたが、賞を取る取らないは別にして、とても楽しい作品だったという印象です。ブロードウェイは女優陣はローラ・ベナンティ(「ジプシー」「スウィング」)、エイミー・スパンガー(「キス・ミー、ケイト」「ロック・オブ・エイジス」)、リタ・ガードナー(「ファンタスティックス」初演のルイザ)など豪華な顔ぶれでしたが、男優はあまりなじみのない人たちでした。
 早くから日本での上演の話が新聞などにも出ていましたが、実際に上演されたのは2008年でした。初演は日生劇場だったのが、今回はシアタークリエです。全員かどうかはわかりませんが、少なくともメインキャストは同じです。

 1985年のニュー・ジャージーの小さな町。マンハッタンへ通勤できるくらいの距離のようです。タイトルの"ウェディング・シンガー"は主人公ロビー・ハート(井上芳雄)の職業、要するに結婚式の司会と余興を兼ねたものです。なんとかケータリング・ホールという会場の専属ですが、名前からして、あまり格の高い会場ではなさそうです。
 バンドの仲間はキーボード担当でボーイ・ジョージを思わせるジョージ(新納慎也)、ギタリストのサミー(鈴木綜馬)はサミー・ヘイガー(1985年当時はヴァン・ヘイレンのボーカル)風でしょうか。ロビーにはヘビメタなリンダ(徳垣友子)という婚約者がいて、間もなく結婚式の予定です。
 ホールにはジュリア(上原多香子)と彼女の従姉ホリー(樹里咲穂)がウェイトレスとして働いています。ジュリアにはグレン(大澄賢也)というボーイフレンドがいます。ホリーはサミーと何カ月か前に別れたのですが、彼からもらったTシャツを着ていたりします。ジュリアはここで働き始めたばかりということを差し引いても、かなりの天然ボケのようです。彼女のそこがいいのか、グレンは彼女にプロポーズし、ジュリアは指輪を受け取ります。
 2組のカップルが順調に結婚へ進んでいたら、ドラマは進みません。結婚式当日、リンダは会場に現れず代わりに別れの手紙が届きます。落ち込んだロビーはジュリアに励まされるうちに、彼女への思いが膨らんでいく。ジュリアはマリッジ・ブルーということもあるのでしょうけれども、なぜか波長の合うロビーへの気持が生まれてきます。

 トニー賞と縁がなかった原因は、ハッピーエンドまでの展開が悪く言うとありきたりだったからかなと思います。しかし、こういうことは批評家的視点からするとマイナスかもしれませんが、別の見方では理屈抜きに楽しいということもできます。
 映画版だとロビーがジュリアのために作った曲はビリー・アイドル(本物)にも気に入られるので、彼がミュージシャンとして、メジャーになるかもしれないと思わせるラストになりますが、ミュージカル版ではいろんな大物スターが登場するものの、みんなそっくりさんなので、ロビーは小さな町のウェディング・シンガーのままです。サクセス・ストーリーではなくラヴ・ストーリーのハッピーエンドなのが、このミュージカルのいいところかなと思います。

 赤字に違いないと書きましたが、公式サイトによると3月17日からチャリティ公演と銘打たれているそうです。終演後には主演の井上芳雄から挨拶があり、被災地と被災された方へのお見舞い、この状況で公演することについて悩んだことを語り、最後にロビー(人名)たちが、ロビー(人名ではなく場所の名前)で手製の募金箱を持って待っていると言って締めました。エレベーターで上がっても、階段を昇っても一階ロビーで列ができていて、ほとんどの人が募金をしていたようです。募金箱は休憩時間にはホワイエにあったので、2回募金した人もいるかもしれません。これが小耳に挟んだ話ですが、中止になった公演の払い戻しに来た人が、そのまま募金していくということもあるのだそうです。
 さて、これは明るく楽しいミュージカルでしたが、それだけが観に行ってよかった、上演してくれていてよかった理由ではないように思っています。
私は震災による被害を、これといって受けてはいないと考えてはいますが、それでもどこかに気疲れしているところがないでもありません。劇場という場所、観劇という行動には、ただ客席に座って観ているだけでも、舞台の上の出演者たちや一緒に観ている人たちとの間に共感という作用があるように思います。もしも暗く悲しい物語だったとしても、共感が生まれているなら、観たことで活力が出てくる。それが、今の状況でミュージカルを含めた演劇を上演する意義なのではないかなと、劇場からの帰りに考えていました。そして、集客が困難な中で、上演を続けるのは劇場の心意気なのだろうと思っています。


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この記事へのコメント

情報は正確に
2011年03月24日 10:29
チャリティー公演ではありません。収益の一部をチャリティーにまわすとの事です。

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