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zoom RSS 「絹の靴下」@青山劇場

<<   作成日時 : 2010/05/22 23:23   >>

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 このところ、青山劇場は来るたびに様子が変わっているようです。地下の男女トイレの改装が終わって、人の動線が変化しているからでしょう。一階も主催者によって、先行前売り用のテーブルを出したり、花の飾り方にも独自のやり方があったりもします。2階へは行きませんでしたが、どうなっているのかな。売店で買える食べ物や飲み物が地下とは違っていたこともあったように思います。

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 「絹の靴下」は夏木マリの歌ではなく、コール・ポーター作詞作曲のブロードウェイ・ミュージカルです。初演は1955年4月。もっとも、ブロードウェイではヒットせず、2年後に作られた映画によって知られていると言うのが妥当でしょう。ブロードウェイでは主役コンビがドン・アメチーとヒルデガルド・ネフ。ドン・アメチーは「コクーン」で宇宙へ行った老人のひとり。最初に電話のベルを鳴らした人。ブロードウェイはこれが初めてで、あまりミュージカルの出演歴はないようです。ヒルデガルド・ネフの方はこれが最初で最後のブロードウェイ。映画でもミュージカルは、ほとんどないようですが、歌については、歌手活動の実績があります。もともとは、こういう人たちが演じたものなので、ダンス・ミュージカルというイメージは映画のフレッド・アステアとシド・チャリースに由来するものと思われます。

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 ブロードウェイ・ミュージカルにも原作があって、それは1939年製作の映画「ニノチカ」。ヒロインの名前がタイトルになっています。ソ連から来たカタブツ女性が、粋なパリジャンとの出会いで、マインド・コントロールから解放されるというストーリーの根幹は共通していますが、ニノチカがモスクワからパリへ派遣されてくる理由が違います。
 「ニノチカ」では、革命の時に、貴族がロシアに残していった財宝を売るために、3人組がパリへ派遣されるのですが、この3人が豪遊・散財するばかりで、ちっとも商談が進まないため、監視者としてニノチカが派遣されてきます。ニノチカに近づくパリジャンは、財宝の本来の所有者である大公妃の愛人レオンです。

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 「絹の靴下」でも3人組の監視ですが、3人組(戸井勝海、伊礼彼方、神田恭兵)がパリにいるのは、若い作曲家ボロフ(渡部豪太)が西側の音楽産業に取り込まれるのを防ぐため。3人組は完全にミイラ取りがミイラで、ニノチカ(湖月わたる)が派遣されてくる。彼女を迎えるのは、ボロフの音楽をハリウッド映画に使おうとするプロデューサーのスティーヴ(今村ねずみ)です。ここに「ニノチカ」にはいない人物、映画の主演女優ジャニス(樹里咲穂)も絡んできます。

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 1939年の段階では、スターリンの恐怖政治についての情報は流れていたものの、ナチスドイツという共通の敵がいたために、米ソはいちおう協調姿勢を保っていた。しかし、何らかの批判を加えたいという意図から、財政難のために旧貴族の財産を売ろうとするエピソードや、マインド・コントロールされたカタブツ女性が喜劇的に描かれたのでしょう。
 1955年には、スターリンからフルシチョフに代替わりして、恐怖政治は終わっていましたが、超大国になったソ連とアメリカとの関係は冷戦と言われる緊張状態。1939年とは違う要素が必要ということで、映画の技術革新(テクニカラー、シネマスコープ、立体音響)が加わったものと思われます。
 いずれの場合も共通しているのは、ニノチカのカタブツぶりと、はじけた後との対比が生きるように、ゴージャスな美女をキャスティングしてきたようです。

 湖月わたるは、冒頭の直角に曲がりながら歩く姿が自然に見えるところが、カタブツのニノチカらしい。歌は上手いと言い難いものがあるのですが、彼女が変わっていく過程はわかりやすく、はじけた後のダンスシーンのゴージャスぶりは見事です。
 出色はジャニスの樹里咲穂。ハリウッドのスター女優。間近にいて、いろいろ言われると逆らえないのですが、冷静になってみると殺意を覚えるようなわがままぶりを発揮します。"Stereophonic Sound", "Satin and Silk", "Josephine"などのナンバーに聴き応えがありました。

 問題はスティーヴの今村ねずみです。おそらく、ロシアの3人組の1人であったら、うまくはまっただろうと思うのですが、主役となると、どうも影が薄い。歌よりダンスの人と見えるので、もっと早い段階で、彼のダンスシーンがあって、主役としての彼を印象づけられたら、どうだったでしょうか。
 そういえば、スティーヴ役にはまる年代の日本のミュージカル男優、つまり大劇場の主役級の人で、ダンスがセールスポイントの人は珍しいようです。パッと思いつくのは、劇団四季の加藤敬二くらいでしょうか。女性だと宝塚出身の人など、ある程度のダンスはできる人が多いのと対照的です。

 何ぶん50年以上前の作品なので、冷戦も、歌われているような映画の技術革新の話もいささか古めかしいのは否めません。音楽もよく言えばいかにもコール・ポーターらしいのですが、裏返すとよく似た曲がたくさんあります。
 それでも、どこか楽しい感じが残るのは、音楽の親しみやすさと、状況が現代的とはいえないとしても、心を縛り付けていた綱から解き放たれる物語だからでしょうか。共産主義に縛られていたニノチカだけでなく、スティーヴも商業主義の陥穽から抜け出したようにも見えました。

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