「アイーダ」@電通四季劇場〔海〕

 チケット窓口へ行くと「満員御礼」の札が出ていました。大型連休が始まっているとはいえ、カレンダー上は平日、しかも昼公演なのに、と思いながら入っていくと、制服の少年少女たちでいっぱい。高校生くらいでしょうか。かなり賑やかなしゃべりっぷりです。
 客席後方のドアから入り、甲高い声の中を抜けて、前方の自分の席へと進みました。すぐ後ろまで、制服の子たちでいっぱいです。どうなるかと思っていましたが、厳しく躾けられているのか、ギリギリまで喋り続けていた子たちも場内が暗くなるのと同時にシーンと静まりかえり、さらに、序曲が始まると同時に大きな拍手が起こりました。そこまでしなくても、という気もしましたが、まあ悪いことではありません。上演中も概ねおとなしくしていました。しかし、笑い声は少なく、途中の拍手もほとんどなし。次に大きな拍手が起こったのは、最後のシーンの後でした。上演中は静かに。始まった時、終わった時は大きな拍手、という指導があったのでしょうか。聞いた話ですが、狂言の学校公演で、開演前に校長が「伝統ある芸能なのだから、話したり笑ったりせず、静かに鑑賞するように」と子どもたちに説諭したというエピソードを思い出しました。しかし、邪魔になるほど騒がしいのと比べれば、ずっとマシなことは確かです。

 「アイーダ」はブロードウェイでのオープン当初と、今回の公演が始まってすぐくらいに観ています。前回はアイーダ(濱田めぐみ)はよかったのですが、ラダメス(渡辺正)は声が不調、アムネリス(五東由衣)はちょっとニンが違うかなと、やや消化不良な印象を持ちました。回を重ね、キャストが替わるとどうなるかなと思って、半年ぶりくらいに観に行きました。
 今回のキャストはアイーダ(樋口麻美)、ラダメス(渡辺正)、アムネリス(鈴木ほのか)。ラダメスは同じ人ですが、声が戻っているので、全く別の人のようでした。発音に生硬さは、楽に話しているところでは問題がありますが、将軍の立場で話しているところは、それなりに合っているとも言えます。アムネリスの鈴木ほのかは、去年観た「サマーハウスの夢」の印象だと、実年齢はともかく童顔なので、アムネリスの若さがもっと自然に出るかなと期待していたのですが、メイクのせいか、その点ではいまひとつでした。それでも、甘ったれ王女から偉大なファラオへの変化、スローバラードからロックへの曲調の変化はみごとでした。アイーダは前回の濱田めぐみよりも一回り小さく感じますが、その分、3人のバランスはよくなったように思います。

 物語の根幹はオペラの「アイーダ」から借りてきたもので、人名も踏襲していますが、人物像は独自のものです。人間関係も表面上は同じでも、別の見方をしています。
 エジプトの将軍ラダメスは王女アムネリスの婚約者。ヌビア遠征で、それとは知らず、ヌビア王女アイーダを捕らえて帰国します。それでも、アイーダが只者ではないことを感じ、彼女に惹かれていきます。ラダメスはアムネリスをお互いに子どもの頃から知っていて、大切な相手とは思っていますが、結婚からは逃げています。婚約してから9年間というのは、ネイサン・デトロイトよりは短いですが、最終的には年貢を納めたネイサンと違い、ラダメスは逃げ切りたいと考えています。
 アムネリスにはラダメスしか見えていません。というより、他に彼女に近づける男はいない。そういう身分です。彼女はいつもはしゃいでいますが、それは孤独感をまぎらすためです。彼女の、王女としての孤独を理解できるのはアイーダでした。そのため、アムネリスはアイーダに心を許します。
 アイーダはエジプト人に捕らえられたことを罪と思い、心を閉ざそうとしますが、ラダメスに惹かれる気持ちを抑えられません。また、囚われたヌビア人たちにとって、彼女が希望であることを知って、王女としての自覚が生まれます。2つの思いは両立し得ないものですが、ヌビア人の指導者という立場からすると、ラダメスには利用価値があります。

 少し前にジェーン・オースティンの「分別と多感」を読んだのですが、「アイーダ」もある意味、アムネリスとアイーダの"分別と多感"の物語です。王女という立場は2人の分別。ラダメスへの思いが多感。
 アイーダはヌビア王の娘という立場の分別で、脱走作戦のためにラダメスを利用しますが、王を逃がしたところでラダメスへの思い(多感)を選びます。
 アムネリスはファラオの娘という立場の分別で、国を裏切り、ヌビア王脱走に手を貸したラダメスの処刑を決めます。しかし、その処刑の方法として、ラダメスをアイーダと共に生き埋めにさせるのは、2人への愛情・友情(多感)からでしょう。生まれ変わりを信じる古代エジプトの、神の権力の代行者であるファラオは、2人の生まれ変わりをずっと見守りつづけます。「ドラキュラ伝説」の生まれ変わりよりも、遥かに長い時を経て、アムネリスの前で生まれ変わった2人は出会います。

 ブロードウェイで観た時から、メトロポリタン美術館のエジプト室から始まるオープニングはお気に入りです。あの場面のアムネリスはファラオの威厳(分別)に満ちながら、慈愛ある王者(多感)であるところがすばらしい。
 前回はやや薄く思えた分別と多感の間の揺れが、今回は何か気持ちがザワザワするように感じました。

Aida (2000 Original Broadway Cast)
Disney
2000-06-12
Original Cast Recording

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