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help RSS 「アンナ・カレーニナ」@シアタークリエ 一路真輝アンナ

<<   作成日時 : 2011/02/05 14:38   >>

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 およそ一カ月ぶりの再見です。前回は瀬奈じゅんアンナでしたが、今回は一路真輝アンナ。前回の観劇記はこちらです。
http://19601106.at.webry.info/201101/article_3.html
前回の観劇で3時間20分ということはわかっているので、覚悟は決めています。主人公の運命が酷なものであることは、ミュージカル版のストーリーが原作通りではないとはいえ、そこは変わらないと承知しているので、この点も覚悟しています。 

 前回観た時は忘れていたのですが、久しぶりに原作の文庫本を手にしてみて、冒頭の一節が特に有名であることを思い出しました。いちばん新しい光文社古典新訳文庫では、こうなっています。
「幸せな家族はどれもみな同じようにみえるが、不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある」(訳:望月哲男)
 原作はともかく、このミュージカル版「アンナ・カレーニナ」で幸せな家族とはどの家族のことか。不幸な家族とはどの家族のことか。カレーニン夫妻は裕福で、カレーニン(山路和弘)は官僚として重要な地位にあるらしく、傍目には羨望される暮らしぶりのようですが、気持はすれ違っています。アンナの兄スティーバ(山西惇)は浮気者で妻ドリー(話題にのぼるだけで出てこない。結婚以来何年かでものすごく太ったらしいですが、どんな姿なのでしょうか)は泣きながら実家へ帰ったりしますが、結局いつも元の鞘に収まっているようです。バカップル感は濃厚ですが、レーヴィン(葛山信吾)とキティ(遠野あすか)は新婚で子どもの誕生を待っているところという状況ということもあり、幸せな家族でしょう。しかし、この家族と同じようにみえる家族は出てきません。他に、幸せそうな場面があったのは、一幕でのアンナと息子セリョージャ、カレーニンと息子セリョージャでしょうか。これらに共通して感じたのは、お互いに対する無条件の絶対的な信頼があることです。
 対して不幸な家族の共通点は不信感と、それによる気持のすれ違いです。カレーニンは実は深い愛情があるようですが表現が下手で、アンナからは冷淡あるいは冷酷な人だと思われています。息子のセリョージャには、彼の愛情が伝わる機会がありましたが、アンナに対してはないままでした。アンナとヴロンスキー(伊礼彼方)との関係は、お互いに情熱で何も見えなくなっている間はよかったものの、子どもが生まれ、相続や離婚などの手続きで、現実に直面することになると、お互いの信頼関係がないことに気づかされます。モルヒネの影響があったのかもしれませんが、後半にアンナがセリョージャを求めるのも、自分が息子を残して家を出たことへの罪悪感を埋めるために、セリョージャが自分を求めていることを確認しようとする、ある種の執着のように見えました。

 不幸な家族にある、それぞれの不幸の形は、同じとは言わないまでも似たようなものに見えました。カレーニンとアンナ、ヴロンスキーとアンナ。この二組の不幸は、お互いの気持のすれ違いと不信感が生み出しているように見えるという点で、同じに見えました。カレーニンとの間の不幸は家庭を壊し、ヴロンスキーとの間の不幸はアンナ自身を壊してしまったようです。アンナが悪い人間というのではなく、情熱は自分でコントロールできない、というより自分でコントロールできないから情熱なのでしょう。冒頭の鉄道事故で火が付いた情熱は、鉄道でしか消せなかったのかもしれません。(余談ですが、「ウーマン・イン・ホワイト」も鉄道事故で始まり、鉄道事故がすべての決着をつけていました。機関車の力が巨大なものとされるところが、19世紀らしいということでしょうか)
 対する幸せな家族ですが、どれも同じには見えませんでした。幸せな家族はお互いの信頼という軸で安定しているので、その軸ができる過程はそれぞれあっても、できあがった後はドラマとしての興味をそそらないということかもしれません。カレーニンとセリョージャも、キティとレーヴィンも安定して幸福だったわけではなく、物語を通じて、それぞれの過程を経て幸福にたどり着きます。

 物語全体では、アンナの(みせかけの)幸福→破滅、レーヴィンとキティのゼロ→幸福という二つの流れがわかりやすく並行していて、3時間20分の上演時間もほとんど意識することはありませんでした。
 「セリョージャ」が顕著ですが、一路アンナは一幕では、幸福な家庭婦人らしく、歌声も話す声も穏やかで柔らかだったのが、二幕では追い詰められてピリピリとした、液体空気で凍らせた葉っぱのような脆そうな硬さの声に変わっていきます。
 キティの遠野あすかは、「アーネスト・イン・ラブ」のグウェンドレンを思い出しました。黒板のところなど、可笑しかったですが、あれは原語版ではどうなっているのでしょう。彼女はラストシーンの落ち着いたところが、
いちばんよかったです。

 ドラマとしてはおもしろかったですが、ミュージカルとしての音楽の生かし方はどうなのでしょうか。前述の「セリョージャ」などソロナンバーに印象的な曲はあるのですが、全体に劇伴のように感じました。すれ違いや食い違いを、別のメロディを歌う二重唱、三重唱にするとか、ミュージカルならではの表現がもっとあってもよかったのではないか、というのがミュージカル「アンナ・カレーニナ」への不満です。
 

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