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新しい劇場の、こけら落し公演です。正式な初日より前のプレビューに入る機会がありました。マスコミやスポンサー関係と品川区の親子観劇会の受付が出ていたので、観客はその範疇に入る人たちなのでしょう。ちょっと小さすぎる子もいたようですが、こういう作品に子どもの観客がいないのも、おかしなものかもしれません。 ちょっと話はずれますが、何日か前の新聞に載っていた笹本玲奈のインタビューの中に、「この舞台(ピーターパン)を見て、ミュージカルに入ってくる方が出てきたらうれしい」という発言がありました。ミュージカルの作り手、出演者、観客が増えるには、小さな子どもがミュージカル好きになるきっかけになる作品の上演が必要であることは確かです。「ライオンキング」「美女と野獣」「サウンド・オブ・ミュージック」「アニー」「ピーターパン」のような、子どもが楽しめて、しかも大人の観賞に耐えるもの。新しい作品が少ないのが気になります。 新しい劇場は大井町線のホームから見える位置にありますが、駅の出口が劇場側にありません。そのために、大きく回り道をしなければなりません。ショートカットする道があるにはあるのですが、そこは通らないように誘導しています。何か取り決めをしているのでしょうか。大回りをすると、ガード下の飲食店街のどこかに設置されているスピーカーから、「美女と野獣」の曲が聴こえてくるので、そういうことを楽しんでいけばいいのかもしれません。私は自転車で行って、イトーヨーカ堂にある駐輪場(4時間100円)を利用したので、歩く距離は電車より短めでした。 先月の「ハムレット」で使われていたチケットは、今回のための準備にすぎなかったようです。受付でチケットを受け取り、ゲートに設置されているスキャナーに券面に印刷されたQRコードをかざすと、案内図が記された座席券が出てきます。飛行機で搭乗券を受け取るのと同じようなものでしょうか。これならば、チケットレスであっても、座席券が記念品として残ります。「ハムレット」の時はQRコードが印刷されている部分を入場の時に切り取られましたが、今回は残っています。たぶん、四季劇場での公演は、徐々にこのシステムに替わっていくのでしょう。 「美女と野獣」は東京では何年ぶりなのでしょうか。赤坂の劇場で2回くらい観た記憶があります。ブロードウェイでは、パレス劇場で上演されていた時に全部で2回。1回は歌手のデビー・ギブソンがベル役でした。元の映画はレーザーディスクと、新宿にあったIMAXシアターで、当初はカットされていた"Human Again"が復活したバージョンを観ましたが、たぶんすべて十年以上前だと思います。 久しぶりに観て思ったのは、まずディズニーのアニメーション映画の最初の舞台化ということで、アニメーションのイメージを守ろうという意図が強かったのかなということです。キャラクターはマンガ的なデフォルメのままで、殴る音などアニメーションのような効果音が使われている。最初の作品だから、こういう手法になったのでしょう。これはこれで成功したわけですが、アニメーションから離れたことで成功した「ライオンキング」とは対照的です。 物語は、古典的なおとぎ話のつくりです。人物像はリアルではありませんが、リアルな心象がところどころに織り込まれてはいる。ベルは本の中に閉じこもっていて、父以外の他人を拒絶しています。ガストンはまともに相手したくなくてもしかたがないですが、それ以外の人の気持ちにも無頓着です。変わり者と言われたことは気にしていますが、自覚があるわけではなく、自分を変えようとは思っていない。野獣の館で、行ってはいけないと言われていた西の塔へ、自分の好奇心の赴くままに入っていくのは、その現れでしょう。野獣の怒りによって初めて、他者の感情を知ったようです。彼女が野獣に惹かれるのは、狼の群れから救われる前に、野獣に人間としての感情があることを知り、その感情に触れたことが大きいのではないかと思います。 にぎやかな"Be Our Guest"、しっとりした"Beauty and the Beast"をはじめとするミュージカル・ナンバーは飛び出す絵本のようです。それも、この物語が、古典的なおとぎ話のつくりだと思うから、そう見えるのかもしれません。 そして、何より古典的おとぎ話的な性格を確立させているのは、冒頭の語りです。たぶん、ここは録音だと思いますが、日下武史のナレーションで、わがままな王子が野獣に変身させられるまでが語られます。重厚な中に、柔らかさのある語りで、この古典的おとぎ話的世界へと引き込まれていくようです。アメリカのテレビドラマ「プッシング・デイジー」に、ジム・デールのナレーションがついているのも同じ効果を狙ったものと思われます。個々の出演者、場面については、不満がないでもないのですが、幕開けで引き込まれていることで、大して気にならなくなっていたようです。 ディズニー・アニメーションの舞台化は、この後も続けられてはいますが、「美女と野獣」と「ライオンキング」を除いて、あまりうまくいっていません。この2作は、時代と世代を超えて、常に新しい観客をとらえることのできる古典ということの証明なのかもしれません。 終演後、劇場を出て、多くの人の後について歩いていきました。新しい劇場ができて、公演が始まったことで、今までにないくらい多くの人が集まり、今までになかった動きをするようになったわけです。まだ、一日目なので、どういうことなのかはわかりませんが、劇中の歌にもあるように「何かが変わった」ということはありそうです。 |
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